旅行に行ける時間は、思っているより短い|70代で4割、80代で4人に1人

お金・投資

「定年したら、夫婦であちこち旅行したい」。そう考えている方は多いと思います。

では、その「いつか」は何歳まで続くのでしょうか。観光庁の統計を見ると、旅行に行く人は70代で大きく減り、80代では4人に1人になります。

この記事では、年代別の旅行のデータと健康寿命から、旅行に行ける時間を考えます。そして、その時間にお金が足りないということにならないよう、今からできる準備を整理します。

70代で4割、80代で4人に1人

観光庁の「旅行・観光消費動向調査」(2025年)から、1年間に国内で宿泊旅行をした人の割合を年代別に見てみます。

年代男性女性
50代59.0%62.2%
60代57.8%58.7%
70代43.1%42.3%
80代以上26.7%24.7%

60代までは、およそ6割の人が1年に1回以上は泊まりがけの旅行をしています。それが70代で4割ほどになり、80代以上では4人に1人まで減ります。

回数で見ると、もっとはっきりします。男性の場合、1人あたりの宿泊旅行の回数は50代で年3.6回、60代で2.8回、70代で1.6回、80代以上では0.8回です。

旅行に行かなくなる理由は人それぞれです。ですが、この下がり方を見ると、体力や健康が大きく関わっていることは想像できます。

旅行に行ける時間は、健康寿命と重なる

ここで思い出したいのが「健康寿命」です。健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間のことで、2022年は男性72.57年、女性75.45年でした。

平均寿命(男性81.05年、女性87.09年)との差は、男性で約8.5年、女性で約11.6年あります。人生の最後の10年前後は、何らかの支えを受けながら暮らす期間になる、ということです。

「元気なうちに行っておけばよかった」と後から思わないために。旅行は、体が動くうちにしかできない楽しみの代表です。60歳、70歳から、あるいはもっと早くから、行きたい場所には行っておく。旅行のデータと健康寿命は、そのことを教えてくれます。

旅行は、足腰を使ういい運動になる

旅行には、楽しみ以外の面もあります。それは、自然と体を動かすことです。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者は歩行かそれと同じくらいの強さの身体活動を1日40分以上、歩数にすると1日約6,000歩以上行うことを勧めています。

普段の生活でこの歩数を毎日続けるのは、意外と大変です。ですが旅行の日は、観光地を歩き、駅の階段を上り下りし、荷物を持って移動します。意識しなくても、目安の歩数を超えやすくなります。

そしてもう一つ、「旅行に行きたいから歩ける体を保つ」という目標にもなります。足腰の筋肉を守る方法は、腰と膝を守るのは、コルセットではなく自分の筋肉ですでまとめています。

旅行にはお金が必要です

とはいえ、旅行にはお金がかかります。同じ調査では、国内の宿泊旅行1回あたりの支出は、60代で約8万円でした(交通費・宿泊費・食事・お土産などを含む)。

仮に年2回行くと、年間で約16万円。65歳から75歳までの10年間なら、約160万円になります。夫婦なら、その倍です。

体が動く時期にお金が足りない。お金ができた頃には体が動かない。これがいちばん避けたい形です。そのために大事なことが2つあります。

1.家計管理:旅行のお金を「先に」取り分ける

旅行のお金を「毎月の残りから出す」と考えると、たいてい残りません。旅行を大事にしたいなら、給料や年金が入ったときに先に取り分けておくことです。

  • 旅行用の口座を分けて、毎月決まった額を自動で移す(銀行の自動積立定期などが使えます)
  • 「年に何回、どこに行きたいか」から、必要な額を逆算する
  • 行きたい場所のリストをつくっておく。目的があると、お金を取り分ける理由がはっきりします

家計の中に「旅行」という項目があるだけで、使うときの気持ちも変わります。貯めたお金を旅行に使うことは、ぜいたくではなく、計画どおりの支出になるからです。

2.投資:働き盛りを過ぎたときに使えるお金を育てる

もう一つは投資です。働き盛りを過ぎてひと段落したとき、手元にお金があるかどうかで、旅行を含めた暮らしの選択肢は大きく変わります。

投資は、時間を味方につけるほど効果が大きくなります。20代、30代、40代のうちから少しずつ積み立てておけば、60代、70代の「旅行に行ける時間」に使えるお金を育てておけます。

お金は、貯めること自体が目的ではありません。使いたいときに使える状態にしておくことが目的です。そして旅行は、「使いたいとき」がはっきり決まっている使い道の一つです。

行けなくなってからも、方法はあります

最後に、少しだけ希望のある話をします。足腰が弱ったり、車いすが必要になったりしても、旅行があきらめるしかないものになるわけではありません。

観光庁は「ユニバーサルツーリズム」として、高齢者や障害のある人が安心して旅行できる環境づくりを進めています。令和8年版観光白書によると、ホテル・旅館や観光施設のバリアフリー化への支援、新幹線や特急の車いす対応席のインターネット予約の充実などが行われています。

ただ、選べる場所や方法は、元気なときより限られます。だからこそ、自由に動ける時間を大切にしたいのです。

まとめ

  • 1年間に宿泊旅行をした人は、60代で約6割、70代で約4割、80代以上で4人に1人
  • 健康寿命と平均寿命の差は、男性で約8.5年、女性で約11.6年。旅行に行ける時間は、健康寿命と重なる
  • 旅行の日は、高齢者の目安である1日約6,000歩を超えやすい。旅行は足腰を使ういい運動になる
  • 宿泊旅行1回の支出は60代で約8万円。旅行のお金は、家計の中で先に取り分ける
  • 働き盛りを過ぎたときに使えるお金は、投資で時間をかけて育てる

「いつか行こう」の「いつか」には期限があります。行きたい場所があるなら、行ける体とお金を、今から準備しておきましょう。

※本記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。投資には元本割れのリスクがあります。商品の選択は、ご自身の状況に合わせて判断してください。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」「令和8年版観光白書」、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、厚生労働省 健康寿命(2022年)

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