腰が痛いからコルセット。膝が痛いから痛み止め。血圧が高いから降圧剤。——どれも「ラクになる」ので、つい手放せなくなります。
でも、ケアマネとして高齢の方々と接していると、「ラクにする道具に頼りすぎて、かえって体が弱っていく」場面を何度も見てきました。今回は、その代表であるコルセットと薬の話を通じて、「道具との正しい付き合い方」を考えてみたいと思います。
まず市販の痛み止めについて——頭ごなしに否定はしません
最初に断っておくと、私は市販薬(痛み止めなど)を全否定するつもりはありません。仕事や家庭で受診する時間がない人にとって、市販薬はとても有効です。急な痛みや発熱を、その場でしのげるのは大きな助けになります。
ただし、条件があります。「なかなか治らない」なら、市販薬を続けるより、すぐに受診すること。痛みや不調が長引くのは、体からのサインです。市販薬で症状にフタをし続けると、本当の原因の発見が遅れてしまいます。
コルセットは「痛みを治す道具」ではない
現場でよく感じるのが、コルセットを「痛みが取れる便利な道具」だと思っている方の多さです。実は、ここに大きな誤解があります。
コルセットは、お腹に圧(腹圧)をかけて、腰を外側から支えることで痛みをやわらげる道具です。つまり、本来なら自分の腹筋や背筋が担うべき「体を支える仕事」を、道具が肩代わりしている状態です。
便利なのですが、落とし穴があります。支える仕事を道具に任せ続けると、自分の腹筋・背筋は使われず、どんどん弱っていきます。だからコルセットは、痛みが強い急性期に一時的に使うもの。痛みが落ち着いたら卒業し、自分の筋肉で支える体に戻していくのが本来の使い方です。ずっと着け続けると、外したときにもっと痛くなる——そんな逆転が起きてしまうのです。
薬も、同じ構造をしている
この「道具に頼りすぎると体が弱る」という構造、実は薬にもそのまま当てはまります。
あれが悪い、これが悪いと、症状が出るたびに薬が1つ、また1つと増えていく。薬が増えるほど、副作用の負担も重なっていきます。ある薬の副作用を抑えるために、また別の薬が足される——気づけば手のひらいっぱいの薬を飲んでいる、という方は珍しくありません。この「薬が薬を呼ぶ連鎖」については多剤処方の記事で詳しく書きました。
もちろん、命を守るために絶対に必要な薬はあります。問題は、「本当に今も必要なのか」が見直されないまま、惰性で増え続けてしまうことです。
私見:本当に大事な薬に絞れないだろうか
これはあくまで私個人の考えですが、「本当に大事な薬だけに絞る」という視点をもっと大切にできないかと思っています。数の目安として「5種類くらいまで」を意識するだけでも、体への負担はずいぶん変わるはずです。
ただし、絶対にご自身の判断で薬をやめないでください。急にやめると危険な薬もあります。「この薬は今も必要ですか?」と、かかりつけの医師や薬剤師に相談すること——ここが出発点です。減薬は必ず専門家と一緒に進めてください。
一番いいのは「道具が要らない体」をつくること
コルセットも薬も、痛みや不調をラクにしてくれる大切な道具です。でも、本当のゴールは「道具に頼らなくてもいい体」を保つこと。そのためにできる予防は、意外とシンプルです。
- 歩く:ウォーキングは腰や膝を支える筋肉を保ち、血圧・血糖・骨にも良い影響があります(ウォーキングの効果まとめ)。
- 食事を見直す:塩分・糖分・食べすぎを整えることは、降圧剤や血糖の薬に頼る前の一歩です(高齢者の血圧予防の記事)。
- 筋肉を落とさない:腹筋・背筋・足腰を保てば、コルセットも痛み止めも必要になりにくくなります。
筋肉を保つには、材料であるたんぱく質も欠かせません。私は手軽に補えるプロテインを毎日の習慣にしています。
まとめ
- 市販の痛み止めは時間がない人には有効。ただし治らないなら早めに受診を。
- コルセットは腹圧で支える道具。頼り続けると腹筋が弱るので、痛みが取れたら卒業する。
- 薬も同じ構造。増えるほど副作用が重なる。「今も必要か」を見直す視点を。
- 減薬は自己判断せず、必ず医師・薬剤師に相談。目安として本当に大事な薬に絞る。
- ゴールは「道具が要らない体」。歩く・食事を見直す・筋肉を落とさない。
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の治療・服薬を推奨するものではありません。薬の変更・中止、コルセットの使用については、必ず医師・薬剤師・理学療法士などの専門家にご相談ください。
道具は上手に使えば強い味方です。頼りきるのではなく、卒業を目指して付き合う。それが、長く自分の足で歩ける体を守る秘訣です。あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

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