介護保険には「高額介護サービス費」という制度があります。1か月の自己負担が上限を超えたら、超えた分が戻ってくる制度です。
ただ、これは誰にでも関係する制度ではありません。むしろ、該当しない方のほうが多いと思います。
該当しやすいのは、住民税が非課税の世帯で、要介護3以上の方です。この制度は、そういう方の家計が壊れてしまわないように作られています。今日はそこをはっきりさせておきたいと思います。
まず、該当しない方から
自己負担が1割で、住民税を払っている世帯の方。上限額は44,400円です。
この方は、基本的に該当しません。計算するとはっきりします。
介護保険では、要介護度ごとに1か月に使えるサービスの量が決まっています。いちばん重い要介護5でも36,217単位、金額にしておよそ36万円です。1割負担なら、自己負担は約36,000円。
限度額いっぱいまでサービスを使っても、44,400円には届かないのです。
「うちは毎月たくさん使っているから対象かも」と思われるかもしれませんが、1割負担の課税世帯なら、デイもヘルパーもショートも目一杯使って、なお届きません。偶然ではなく、そういう設計です。
該当するのは、この3つのどれかです
①住民税非課税世帯で、要介護3以上の方
いちばん多いのがこの形です。上限が24,600円に下がるため、1割負担でも届きます。
| 要介護度 | 限度額の何割使うと上限に届くか |
|---|---|
| 要介護2以下 | 届かない |
| 要介護3 | およそ9割 |
| 要介護4 | およそ8割 |
| 要介護5 | およそ7割 |
年金収入が80万9千円以下の方はさらに上限が15,000円になり、要介護1でも届く水準です。
②自己負担が2割・3割の方
2割負担なら要介護3以上、3割負担なら要介護1でも届くことがあります。負担割合証を一度確認してみてください。
③同じ世帯に、介護を受けている方が2人いる
これが見落とされやすいところです。上限額は世帯ごとに判定します。ご夫婦とも介護を受けている場合、お一人ずつでは届かなくても、合わせると超えることがあります。
この制度が守っているもの
ここまで読んで、「非課税世帯の方はすぐ上限に達してしまうのか」と思われたかもしれません。そのとおりです。そして、それでいいのです。
上限24,600円というのは、要介護3以上の方が必要なサービスを使えば自然に超える水準に設定されています。つまりこの制度は、該当させないためではなく、該当させるためにあります。
収入が少ない方が、お金を理由にサービスを削らずに済むように。それがこの制度の目的です。
だから現場では、こういう使い方ができます。すでに上限に達している方は、限度額の範囲内であれば、サービスを増やしても自己負担は増えません。「これ以上使うとお金が心配で」と遠慮されているご家族に、その心配は要りませんとお伝えできる場面があります。
負担を感じているなら、それもサインです
毎月の費用が重い。あるいは、今のサービスの量では介護がしんどい。そう感じているなら、それ自体がプランを見直すサインかもしれません。
考えられることは、いくつかあります。
- サービスの組み合わせを変えれば、同じ費用でも楽になることがある
- 心身の状態が変わっているなら、区分変更を申請して使える枠を広げられることがある
- 負担限度額認定証など、まだ使っていない軽減制度があるかもしれない
ケアプランは、一度作ったら変えられないものではありません。むしろ、状況が変われば変えるものです。
「こんなことで相談していいのだろうか」と思われるかもしれません。ですが、お金のことも介護のしんどさも、遠慮なく言ってもらったほうが助かります。言われなければ、こちらからは気づけないことが多いからです。
該当する方の手続きは、最初の1回だけ
手続き自体はとても簡単です。
多くの市町村では、上限を超えた方に「該当します」というお知らせが郵送されます。振込先の口座を書いて返送すれば終わりです。翌月以降も該当すれば、同じ口座に自動で振り込まれます。毎月申請書を書く必要はありません。
お知らせが届いたら、必ず返送してください。これを出さないと、戻るはずのお金が戻りません。
なお、通知はサービスを使った月の2〜3か月後に届きます。また、転居された直後や、ご本人が施設に入っていて自宅に郵便が届いている場合など、お知らせが手元に届かないこともあります。「該当するかもしれない」と思ったら、担当のケアマネジャーか市町村の窓口に相談してみてください。
時効は、対象となった月の翌月1日から2年です。2年以内であれば、さかのぼって確認できます。
戻ってこないものもあります
この制度で戻るのは、あくまで介護サービスの自己負担分だけです。次のものは含まれません。
- 施設やショートステイの食費・居住費
- 福祉用具の購入費(レンタル料は含まれます)
- 住宅改修費
- 限度額を超えて全額自己負担にした分
- おむつ代などの日常生活費
実は、介護で家計が苦しくなる原因の多くは、この「含まれないもの」の側にあります。特に施設の食費と居住費は毎月かかり続けるので影響が大きい。こちらは負担限度額認定証(特定入所者介護サービス費)という別の制度で軽減できる場合がありますので、施設やショートを使う方は必ず確認してください。
なお、医療費と介護費を1年分合算する「高額医療・高額介護合算療養費」もあります。ただし医療保険側の証明書を取り寄せる必要があり、手続きのわりに戻る額が数千円ということも珍しくありません。医療も介護も毎月しっかり使っている方だけ、確認する価値があると思います。
まとめ
- 該当しやすいのは住民税非課税世帯で要介護3以上の方。1割負担の課税世帯は、限度額いっぱい使っても届かない
- 上限額は世帯単位。同じ世帯に介護を受けている方が2人いれば、合算して判定される
- お知らせが届いたら必ず返送する。2回目以降は自動で振り込まれる。時効は2年
- 食費・居住費・福祉用具の購入費・住宅改修費は対象外
- 費用や介護の負担を感じているなら、それはプランを見直すサインかもしれない
制度は、すべて申請すればよいというものではありません。自分が対象なのか、手間と戻る額が見合っているのか。そこを見極めるほうが、ずっと大事だと思います。
ご自身やご家族が該当するかどうかは、負担割合証と課税状況で判断できます。わからなければ、市町村の介護保険担当窓口か、担当のケアマネジャーにお尋ねください。

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