感染症対策で、介護事業所に求められていることを数えてみてください。委員会、指針、研修、訓練。そして、業務継続計画(BCP)の研修と訓練。
「研修と訓練を、感染症とBCPで別々に、年に何回もやらないといけないのか」。そう感じている管理者の方は多いと思います。
結論から言うと、感染症の研修・訓練と、BCPの研修・訓練は、一緒に行ってかまいません。運営基準の解釈通知に、そう書かれています。
この記事では、感染症対策で求められていることを整理し、研修と訓練を1回で済ませる方法、そして形だけで終わらない訓練のポイントをまとめます。記事の最後で、指針・様式集・研修テキスト・訓練シナリオ・BCPを、通所・入所・訪問の3つのサービス別に無料で配布しています。
感染症対策で求められていること
| 項目 | 通所・訪問などのサービス | 施設系サービス |
|---|---|---|
| 委員会 | おおむね6か月に1回以上+流行期など必要なときに随時 | おおむね3か月に1回以上 |
| 指針 | 「平常時の対策」と「発生時の対応」、連絡体制を定める | 同じ |
| 研修 | 年1回以上(新規採用時にも行うことが望ましい) | 年2回以上 |
| 訓練 | 年1回以上。机上と実地を組み合わせる | 年2回以上 |
| BCP(感染症) | 計画を作り、研修・訓練・見直しを行う | 同じ |
委員会は、ほかの会議と一緒に開くことも、オンラインで開くこともできます。小さな事業所ほど、この「一緒にしてよい」をうまく使うことが大切です。
研修と訓練は、BCPと1回にまとめていい
解釈通知では、BCPの研修について「感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない」とされています。訓練も同じです。
つまり、年1回(施設系は年2回)の研修で、感染対策の基本とBCPの内容を両方扱い、年1回(施設系は年2回)の訓練で、発生時の動き方とBCPの発動の判断を両方確認すれば、それぞれの義務を満たせます。
ポイントは、記録に「BCPの研修(訓練)を兼ねる」と残しておくことです。運営指導では、実施した記録を確認されます。一緒に行ったことが記録から分からなければ、別々に行っていないと見られるおそれがあります。
BCPがないと、基本報酬が減算されます
2024年度の介護報酬改定で、「業務継続計画未策定減算」ができました。感染症か自然災害のどちらか、または両方のBCPを作っていない場合、基本報酬が減算されます。
- 施設・居住系サービス:所定単位数の3%
- その他のサービス:所定単位数の1%
- 居宅療養管理指導・特定福祉用具販売は対象外
経過措置は2025年3月31日で終わっています。感染症編だけでは足りず、自然災害編も必要な点に注意してください。
訓練は「決まっていないこと」を見つけるためにある
訓練というと、手順どおりに動けるかを確かめるものと思われがちです。ですが、机上訓練のいちばんの成果は、「決まっていなかった」「実際には動けない」と分かることです。
たとえば、デイサービスで次の場面を想定してみます。
迎えのときは症状がなかった利用者Aさん。来所後の検温で37.8℃ありました。一緒に暮らす長男は仕事中で、電話がつながりません。
このとき、Aさんをどうやって家に帰すのか。家に誰もいない場合はどうするのか。同じ送迎車に乗っていた利用者はどうするのか。話し合ってみると、「緊急連絡先が1つしか登録されていない利用者がいる」「電話以外の連絡手段がない」といった課題が見えてきます。
もう一つ大切なのが、5類になった今の実情に合わせることです。以前のように、感染の疑いが出たらすぐに保健所へ連絡し、一律に利用を止める対応ではありません。行政への報告が必要なのは、同じ感染症で10名以上、または全利用者の半数以上になった場合などです。それに当てはまらない段階では、事業所が状況を見て判断します。訓練は、その判断の練習の場でもあります。
BCPと訓練は、サービスごとに中身が違う
厚生労働省のBCPのひな形は、入所系・通所系・訪問系で分かれています。発生時に判断することが、サービスによってまったく違うからです。
- 通所系:来所後に発熱した利用者を、どう帰すか。サービスを続けるか、縮小するか、休業するか
- 入所系:区域をどう分け、担当職員をどう固定するか。職員が感染して足りなくなったとき、夜勤をどう組むか
- 訪問系:訪問先で利用者に熱があったとき、ケアを続けるか。人手が足りないとき、どの利用者から訪問するか
一方で、公式のひな形は新型コロナを前提にした内容のままです。例文と作成手順が混ざっていて長く、記入しにくい作りでもあります。
指針・様式集・研修テキスト・訓練シナリオ・BCPを配布しています
ここまでの内容を、事業所でそのまま使える形にまとめました。厚生労働省の解釈通知、「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」、感染症BCPのガイドラインとひな形をもとにしています。Word版は事業所名や連絡先を書き換えて使えます。
研修テキストと訓練シナリオ
- 研修テキスト(6ページ・60分):標準予防策と手指衛生、嘔吐物の処理、介護現場で多い感染症、「いつもと違う」に気づいたときの動き方。最後の章に自分の事業所のBCPを書き込む欄があり、BCPの研修も兼ねられます
- 訓練シナリオ(通所系・入所系・訪問系):机上訓練4場面(状況→話し合う問い→進行役用の確認のポイント)と、実地訓練(防護具の着け外し・嘔吐物の処理)のチェック表。約60分で、感染症の訓練とBCPの訓練を兼ねられます
研修テキスト・訓練シナリオをダウンロード
研修テキスト(全6ページ)
訓練シナリオ 通所系(全5ページ)
訓練シナリオ 入所系(全4ページ)
訓練シナリオ 訪問系(全4ページ)
指針と様式集
- 感染症の予防及びまん延の防止のための指針(6ページ):第1部 指針(平常時の対策、発生時の対応、行政への報告基準、連絡体制)、第2部 予防マニュアル(手指衛生、防護具、嘔吐物の処理と消毒液の作り方、主な感染症4つ)、別紙 発症者の経過記録
- 感染対策委員会・研修・訓練の様式集(7ページ):委員会の開催記録、職員への周知記録、年間計画・実績表、研修の実施報告書、訓練の実施記録。研修・訓練の記録には「BCPの研修(訓練)を兼ねる」欄があります
業務継続計画(BCP)感染症編
厚生労働省のひな形と同じ項目の並びにしたうえで、感染症全般と5類以降の実情に合わせた内容にしました。様式は実際に使うものに絞り、計画の末尾に「見直しの記録」を付けています。
BCP(感染症編)をダウンロード
通所系(全11ページ)
入所系(全11ページ)
訪問系(全11ページ)
会員登録やメールアドレスの入力は不要です。ほかの研修資料は、介護事業所向け 無料研修資料のページにまとめています。
まとめ
- 感染症対策で求められるのは、委員会・指針・研修・訓練、そしてBCP
- 感染症の研修・訓練とBCPの研修・訓練は、一緒に行ってよい。記録に「兼ねる」と残す
- BCPがないと基本報酬が減算される(施設・居住系3%、その他1%)。感染症編と自然災害編の両方が必要
- 訓練のいちばんの成果は、「決まっていないこと」「実際には動けないこと」が分かること
- 5類以降は、報告基準に当てはまるかを確認し、事業所が状況に合わせて判断する
- BCPと訓練は、通所・入所・訪問で中身が違う。自分のサービスに合ったものを使う
研修も訓練も、回数をこなすことが目的ではありません。いざというときに、職員が迷わず動けること。そのための準備を、なるべく少ない負担で続けていきましょう。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。研修・訓練の回数など、サービスの種類によって基準が異なる部分があります。詳しくは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。


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