介護保険の2割負担はどこまで広がる?|年金収入230万円まで下げる案と、今からできる備え

お金・投資

介護保険サービスの自己負担は、多くの方が1割です。この「2割負担」になる人の範囲を広げる議論が、2026年9月から国の審議会で再び進んでいます。

今の基準は、単身なら「年金収入とその他の所得の合計が280万円以上」です。これを230万〜260万円まで下げる案が出ています。政府は2026年度中に結論を出すとしています。

この記事では、決まったことと議論中のことを分けて整理します。そのうえで、負担が増えていく時代にどう備えるかを、私の考えとしてまとめます。

項目2026年11月時点
今の2割負担の基準単身:年金収入+その他の所得が280万円以上(夫婦は346万円以上)
見直し案260万〜230万円まで下げる4つの案(夫婦は326万〜296万円)
新たに2割になる人約13万〜35万人(負担増に上限を設ける案での粗い試算)
負担増への配慮案増える額を月7,000円までにする/預貯金が少ない人は申請で1割に戻す
結論の時期2026年度中(2027年度からの介護保険事業計画の前まで)
決まったかまだ決まっていません

今の2割負担は「年金収入+その他の所得が280万円以上」

自己負担の割合は、65歳以上の方の所得で決まります。厚生労働省の資料にある今の基準は、次のとおりです。

負担割合単身世帯の基準夫婦世帯の基準
3割合計所得金額220万円以上、かつ年金収入+その他の合計所得金額340万円以上同じく463万円以上
2割合計所得金額160万円以上、かつ年金収入+その他の合計所得金額280万円以上同じく346万円以上
1割上のどちらにも当てはまらない方同左

「年金収入」は、税金などが引かれる前の年金の額です。「その他の合計所得金額」は、給与や家賃収入など、年金以外の所得のことです。

令和7年3月時点で、サービスを使っている約541万人のうち、2割負担は約4.3%、3割負担は約3.9%です。9割以上の方は1割です。

今回の見直しと関係がない方もいます。

  • 40〜64歳で介護保険を使っている方(所得にかかわらず1割)
  • 住民税が非課税の方、合計所得金額が160万円に届かない方

ご自身の割合は、市町村から毎年届く「介護保険負担割合証」に書かれています。8月から翌年7月までが1年分で、所得が変われば翌年の割合も変わります。

見直し案は「230万〜260万円」|新たに2割になるのは約13万〜35万人

2025年12月の審議会の意見書では、基準を下げる4つの案が示されました。2026年9月18日の介護保険部会(第136回)で、この案をもとに議論が再開しています。

案単身世帯夫婦世帯新たに2割になる人
1260万円以上326万円以上約13万人
2250万円以上316万円以上約21万人
3240万円以上306万円以上約28万人
4230万円以上296万円以上約35万人

人数は、増える負担に月7,000円の上限を設けた場合の粗い試算です。預貯金が少ない人を1割に戻す案を組み合わせると、実際に2割になる人はこれより少なくなります。

2割負担を始めた2015年は、65歳以上の上位約20%が対象でした。今回の案は上位約25%〜30%にあたります。線は少しずつ下りてきているということです。

負担はいくら増える?|上限7,000円の案と、預貯金で1割に戻す案

2割になると、同じサービスを使っても自己負担は2倍になります。たとえば要介護1の方が、月の上限(16,765単位)まで使った場合です。1単位10円で計算すると、次のようになります。

  • 1割負担:月16,765円
  • 2割負担:月33,530円(月16,765円の増加)

実際の単価は地域やサービスで少し違います。それでも、年金暮らしで月1万円以上の負担増は軽くありません。そこで、負担増をやわらげる2つの案が出ています。

案1:増える額を月7,000円までにする

新たに2割になった方の負担増を、当分の間、月7,000円までに抑える案です。上の例なら、月16,765円の増加が7,000円に収まります。75歳以上の医療費が2割負担になったときにも、同じような上限が設けられました。

案2:預貯金が一定額以下なら、申請で1割に戻す

同じ年金額でも、預貯金の額は人によって大きく違います。そこで、預貯金が少ない方は申請で1割に戻すという案です。目安として、単身300万〜700万円以下、夫婦1,300万〜1,700万円以下のパターンが示されています。

ただし、預貯金をどう確かめるかが課題です。市町村の事務が増えるという意見もあり、どちらの案になるかはまだ決まっていません。

なお、自己負担には「高額介護サービス費」という月の上限があります。この制度で戻ってくる方もいるので、対象になる方の条件も確認しておいてください。

決まったことと、まだ決まっていないこと

制度の見直しの話は、「決まったこと」と「議論中のこと」が混ざりやすいので、分けておきます。

決まっていること

  • 2割負担の基準を見直すかどうか、2027年度から始まる介護保険事業計画の前までに結論を出す(2023年12月の閣議決定)
  • 骨太の方針2026で、2026年度中に結論を得るとされた
  • 今の基準(単身280万円以上)は、結論が出るまで変わらない

まだ決まっていないこと

  • 基準を下げるかどうか、下げるならどこまでか
  • 月7,000円の上限と、預貯金で1割に戻す案のどちらを使うか
  • 変わるとしたら、いつからか
  • 預貯金や株の利益などを負担に反映するかどうか

審議会では意見が分かれています。拡大を求める側は、現役世代の保険料負担が限界に近いことを挙げています。慎重な側は、物価高の中での生活や、介護は医療より長く使い続けることを心配しています。負担が増えると、サービスの利用を控えて状態が悪くなるのではという声もあります。

一方で、財務省は2026年11月4日の財政制度等審議会の資料で、「2割負担の対象者を拡大すべき」とはっきり書いています。部会は年内に意見をまとめることを目指していると報じられています。

医療の負担も、上がっていく流れにあります

負担が増えているのは、介護だけではありません。

  • 高額療養費(医療費の月の上限)は、2026年8月に引き上げられた(詳しくはこちら)
  • 75歳以上の医療制度では、株の配当などの金融所得を、保険料や窓口負担の判定に反映する法律が2026年6月に公布された(実施は数年先)
  • 財務省は、70歳以上の窓口負担を年齢によらず「原則3割」にすることを目指すべきだとしている(提案の段階)

最後の「原則3割」は財務省の考えで、決まったことではありません。ただ、負担の範囲は広がり、割合も上がっていく。これが今の流れだと私は見ています。投資の利益が保険料に反映される話は、投資の利益で保険料が上がる時代に書きました。

負担が増えるなら、収入は少ないほうが得なのか

私は、この流れは仕方のないことだと考えています。高齢者は増え、支える現役世代は減っています。制度を続けるには、払える人に少しずつ負担してもらうしかありません。

では、2割にならないように、年金や収入は少ないほうがいいのでしょうか。それはあり得ません。

2割になるのは、それだけの収入があるからです。上の例でも、増える負担は上限案なら月7,000円で、介護サービスを使っている間だけです。一方で、年金が少なければ、介護を使う前から毎月の生活がずっと苦しくなります。基準ぎりぎりを狙って収入を減らしても、手元に残るお金はほとんど増えません。

負担を避けることより、負担が増えても困らない家計を作るほうが、ずっと確実です。

ではどうするか|お金を守り、育て、使う

私が大事だと思っているのは、次の5つです。順番にも意味があります。

1. 無駄な出費を減らす

まずは毎月の固定費です。使っていないサブスク、内容を覚えていない保険、高い通信費。一度見直せば、効果がずっと続きます。介護への備えも、保険に頼るより自分で用意するほうがよいと私は考えています(私が民間の介護保険に入らない理由)。

2. お金を守る

詐欺や、その場で決める高い契約からお金を守ることです。もうひとつは、申請すれば負担が軽くなる制度を知っておくことです。高額介護サービス費のように、知らないと使えない制度があります。

3. お金を貯める

給料や年金が入ったら、使う前に先に分けておく「先取り」が基本です。残ったら貯めるやり方では、なかなか貯まりません。

4. お金に働いてもらう

貯めたお金の一部は、NISAなどで長く運用します。今の判定では、NISAの利益は所得に入らないので、負担割合や保険料には影響しません。ただ、預貯金などの資産を負担に反映する仕組みも議論されているので、この先も同じとは限りません。

5. 幸福度の高いことに使う

守って、育てたお金は、自分が本当にうれしいことに使います。お金を貯めること自体が目的になると、使うべきときに使えなくなります。体が動くうちにしかできないこともあります(旅行に行ける時間は、思っているより短い)。

制度が変わっても、この順番は変わりません。介護サービスの使い方や負担で迷ったら、担当のケアマネジャーに相談してください。

まとめ

  • 今の2割負担の基準は、単身で年金収入+その他の所得が280万円以上
  • これを230万〜260万円に下げる案が議論中。新たに2割になるのは約13万〜35万人(粗い試算)
  • 負担増を月7,000円までにする案、預貯金が少なければ1割に戻す案もある
  • まだ何も決まっていない。結論は2026年度中の予定
  • 医療も含めて、負担の範囲は広がり、割合も上がっていく流れ
  • 負担を避けるより、無駄を減らし、守り、貯め、育て、幸福度の高いことに使う

負担が増える話は、聞くだけで気が重くなります。それでも、家計を整えておけば、制度が変わっても慌てずに済みます。あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

※本記事は2026年11月時点の公開資料にもとづく内容です。制度の最終的な内容は、今後の決定をご確認ください。

※本記事は個人の考えに基づく情報提供であり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。

参考資料

コメント

タイトルとURLをコピーしました