「投資をしろ」と国が言うので、NISAを始めた。iDeCoも積み立てている。そこへ今度は——その利益で健康保険料が上がるという話が出てきました。
率直に言えば、騙されたような気持ちになります。投資をすすめておいて、増えたら取るのか、と。
ただ、色々と調べていくうちに、私はこれはある意味で仕方のない流れだと考えるようになりました。今回はその話をします。
何が起きようとしているのか
今の制度では、株の配当や売却益について確定申告をすると、保険料に上乗せされます。対象は国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料です。
逆に言えば、申告しなければ保険料には影響しません。かつては「所得税は申告して、住民税は申告不要」という選択もできましたが、この抜け道は2024年度から塞がれました。
そして今、検討されているのが「申告しなくても把握される」仕組みです。
- 金融機関が提出する法定調書(年間取引報告書)を活用する
- マイナンバーで名寄せして、保険者へ通知する
- 申告するかしないか、という選択肢がなくなる
厚生労働省の資料によれば、まず75歳以上の後期高齢者医療制度から始める方針です。その後、国民健康保険や介護保険への拡大も視野に入っています。関連法の改正が必要で、システム整備にも数年かかるとされています。
誰に影響があるのか
整理すると、こうなります。
- 75歳以上で投資をしている人——最初に影響を受けます。保険料や窓口負担の判定に反映されます
- 自営業・退職して国保に入っている人——次の段階で対象になる可能性
- 65歳以上——介護保険料にも影響し得ます
- 会社員(在職中)——給与ベースで計算されるため、今のところ影響なし
- NISAだけの人——対象外です。非課税なので、そもそも所得として扱われません
医療費の窓口負担についても、金融所得を含めて2割・3割の判定をする方向が示されています。「資産はあるが所得は低い」という状態が、通用しなくなるということです。
それでも「仕方ない」と思う理由
ここからが、私の考えです。
この流れを止められない理由は、はっきりしています。医療費が増えすぎているからです。
日本の医療制度は、本当に素晴らしいものだと思います。保険証一枚でどこの病院にもかかれる。高度な医療が、住んでいる場所を問わず受けられる。窓口で払うのは1〜3割で、高額療養費制度まである。世界的に見て、これほど手厚い仕組みは多くありません。
ケアマネとして働いていると、この制度に何度も助けられます。急変した利用者さんがすぐ入院できる。必要な検査が受けられる。ご家族が費用で潰れずに済む。この安心感は、当たり前ではありません。
でも、その制度がもたなくなってきているのも事実です。高齢者は増え、支える現役世代は減り、医療は高度化してさらにお金がかかる。
財源が要ります。どこかから取らなければ、制度そのものが壊れます。そう考えると、「資産のある人からも相応に負担してもらおう」という発想は、避けられない流れだと感じるのです。
「自分には関係ない」は、通用しません
ここでもうひとつ、大事なことを書いておきます。
「金持ちから取ればいい。自分は資産なんてないから関係ない」——そう思う方もいるでしょう。
でも、その線引きは必ず広がっていきます。
最初は75歳以上から。次は70歳以上、65歳以上と。対象となる所得の範囲も、判定の基準も、少しずつ動いていくはずです。医療費は年々増え続けているのですから、一度で終わるわけがありません。
今は関係なくても、いずれ自分の番が来る。そういう前提で考えておいたほうが、後で慌てずに済みます。
では、どうするか
悲観的な話ばかりになりましたが、打てる手はあります。
ひとつめは、NISAを思い出すこと。
NISAは非課税なので、この保険料の話の対象外です。一人あたり1,800万円という枠があり、その運用益には税金がかかりません。したがって保険料にも反映されません。
この意味は、以前より大きくなりました。NISAのメリットは「税金がかからない」だけでなく、「保険料にも響かない」ということになったのです。特定口座で投資している方は、税金と保険料の両方を考える必要が出てきます。
今現役世代の人が、65歳、75歳に、NISAでどれだけ資産が育っているか。コツコツ積み立ててきた方なら、老後のお金の心配とは無縁になっている可能性が十分にあります(始め方はこちらの記事に書きました)。
ただし——税制も制度も、この先どうなるかは分かりません。NISAが未来永劫この形で続く保証はないのです。だからこそ、その都度、航路を見直すという姿勢を忘れないでください。船長が乗っているのは、海が荒れたときに進路を確かめるためです。
もうひとつ、いちばん確実な方法
そして最後に、これがいちばん大事だと思っていることを書きます。
健康に気をつけて生活すること。
あまりに当たり前で拍子抜けするかもしれません。でも、これがもっとも確実です。
医療費の窓口で払う1〜3割以外は、すべて保険料と税金でまかなわれています。つまり、私たちが病院にかかるたびに、社会全体の負担が増えているということです。
だからこそ、高齢の方には自分が受けている医療や薬が、本当に必要なものか確認してほしいと思います。
- 飲み続けているその薬は、今も必要か(多剤処方の記事はこちら)
- なんとなく続けている通院はないか
- 複数の病院で似た薬をもらっていないか
これは「医療を我慢しろ」という話ではありません。必要な医療は堂々と受けるべきです。ただ、惰性で続いているものがあるなら、一度医師に相談してみる価値があります。
そして歩くこと、転ばない体をつくること。予防は、自分の健康を守ると同時に、社会保障の負担を減らします。
一人ひとりが健康に気を配ることが、将来の負担増を和らげることにつながる。この素晴らしい医療制度を次の世代にも残すために、できることから始めたいと思っています。
まとめ
- 金融所得を保険料・窓口負担に反映する仕組みが検討されている。まず75歳以上から、その後年齢層拡大の可能性。
- 申告するかしないかの選択肢がなくなる方向。マイナンバーで名寄せして把握される。
- NISAは対象外。非課税なので保険料にも響かない。この価値が以前より大きくなった。
- 背景にあるのは医療費の増大。素晴らしい制度を守るには、どこかから財源が要る。
- 「自分には関係ない」は通用しない。線引きは必ず広がっていく。
- いちばん確実な対策は、健康でいること。無駄な医療・薬がないか確認すること。
※本記事は2026年8月時点の報道・公表資料に基づく個人の考えです。制度は検討段階であり、内容や時期は変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省などの公式発表をご確認ください。また、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。薬や治療の変更は必ず医師にご相談ください。
制度は変わります。だからこそ、変化を知って、その都度自分の航路を見直していきましょう。

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