会社を辞めたあとの手続きは、窓口も期限もバラバラです。会社、ハローワーク、市役所、年金事務所。どれも「知らなかった」で済まされず、しかも自分から動かないと何も始まりません。
そこで今回は、やることを時系列で並べました。上から順にこなしていけば、大きな取りこぼしは防げます。
あわせて、★の数でお金への効き目を示しました。★★★は、やるかやらないかで数万円から数十万円変わるものです。
先に、期限があるものだけ
時間がない方は、ここだけ読んでください。期限を過ぎると、選択肢そのものが消えます。
- 健康保険の任意継続を選ぶなら、資格喪失日から20日以内——1日でも過ぎたら、二度と選べません
- 国民健康保険への加入、国民年金への切替は14日以内
- 失業給付は、離職票が届いてからハローワークへ(受給期間は離職日の翌日から1年)
特に危ないのが任意継続の20日です。国保が高くつく人でも、期限を過ぎたら比較すらできなくなります。
【退職前】会社に確認しておく ★★
辞める前にしかできないことがあります。
- 有給休暇の残日数——消化せずに辞めると、そのまま消えます。日給1万円で20日残っていれば20万円分です
- 退職金規程——支給されるのか、いつ振り込まれるのか
- 健康保険が組合健保か協会けんぽか——組合健保なら独自の給付があることも
【退職時】返すものと、頼むこと ★★
退職日にやることは、大きく2つです。返すものを返し、出してほしい書類を頼む。この2つだけ済ませておけば、あとは待つだけになります。
返すもの
- 健康保険証——扶養家族の分も一緒に返します
- 社員証、名刺、制服、貸与されていたパソコンなど
保険証の返却は、単なる形式ではありません。返さないと会社の資格喪失の手続きが進まず、その先の書類がすべて遅れます。国保への切替は14日以内なので、ここで詰まると期限に間に合わなくなります。
頼むこと
- 離職票を発行してほしいと伝える——希望を伝えないと発行されないことがあります
- 健康保険資格喪失証明書を出してほしいと頼む——国保の手続きに必要ですが、頼まないと発行しない会社もあります
- 書類の送付先住所を伝える——引っ越す予定があるなら必ず。届かない原因のほとんどがこれです
あわせて、会社に預けていた年金手帳や基礎年金番号通知書を受け取ってください。
【退職後すぐ】会社から届く書類 ★★★
ここが起点です。書類が揃わないと、この先のすべてが止まります。
- 離職票(1・2)——退職後10日〜2週間で届きます。失業給付の申請に必須
- 源泉徴収票——退職日から1か月以内に交付する義務が会社にあります。翌年の確定申告と、転職先の年末調整に使います
- 健康保険資格喪失証明書——退職後まもなく。国保に加入するときに必要です
- 年金手帳・基礎年金番号通知書——会社が預かっていれば退職日に返却されます
まとめて届くわけではありません。受け取る時期がずれるので、届いたものから順に手続きを進めてください。
離職票は2枚組です。離職票-1は失業給付の振込先口座を指定する用紙、離職票-2には離職前6か月の賃金と離職理由が書かれています。
この離職理由によって、給付制限の有無も給付日数も変わります。会社の記載に異議があれば申し立てられるので、署名する前に必ず確認してください。
2週間たっても離職票が届かないときは、会社に催促してください。それでも出てこない場合は、ハローワークに相談すれば手続きの方法があります。会社が出し渋っても、あきらめる必要はありません。
【20日以内】健康保険をどうするか ★★★
選択肢は3つです。年間で10万円以上変わることもあるので、必ず比較してください。
- ① 家族の扶養に入る——収入などの条件を満たせば保険料はゼロ。使えるなら、これがいちばん有利です
- ② 任意継続——原則2年間。会社負担分もあわせて自分で払いますが、保険料に上限があるため収入が高かった人ほど有利になります。資格喪失日から20日以内に申請(退職前に継続2か月以上の加入期間が必要)
- ③ 国民健康保険——市区町村の制度。前年の所得をもとに計算されるため、退職1年目は高くなりがちです
ここで知っているかどうかで大きく変わる制度があります。
倒産・解雇・雇止めなどで離職した方(非自発的失業者)は、前年の給与所得を30%とみなして国民健康保険料が計算されます。
この軽減が使えるなら、国保が一気に安くなり、任意継続と比べるまでもないことが多いです。離職の翌日から翌年度末まで適用され、高額療養費の自己負担限度額の区分判定にも反映されます。病気を理由とした退職なども対象になることがあります。
比較の手順はシンプルです。市区町村の窓口で国保の保険料を試算してもらい、加入していた健保に任意継続の保険料を聞く。この2つを並べるだけです。20日という期限があるので、退職したらすぐ動いてください。
【14日以内】国民年金への切替と免除申請 ★★
厚生年金から外れるので、国民年金(第1号被保険者)への切替が必要です。2026年度の保険料は月17,920円、年間で約21.5万円。収入がない時期には重い負担です。
ここで使えるのが失業特例免除です。通常は前年の所得で審査されますが、失業した場合はその所得を除外して審査されます。退職直後は前年の収入が基準になるため、これを知らないと「所得が高いから対象外」と思い込んでしまいます。
ただし、いいことばかりではありません。
- 免除期間は、将来受け取る年金額が減ります(全額免除でも2分の1は反映されます)
- 10年以内なら追納できます。余裕ができたら納めておくのが得です
それでも、払えないまま「未納」にするのとはまったく違います。未納の期間があると、万一のときの障害年金や遺族年金まで受けられなくなることがあります。払えないなら、必ず免除の手続きをしてください。
【離職票が届いたら】ハローワークへ ★★★
離職票を持って、求職の申込みをします。ここから失業給付の流れが始まります。
- まず待期7日間。これは誰でも共通です
- 会社都合なら、待期のあと支給が始まります
- 自己都合の給付制限は、2025年4月から2か月→1か月に短縮されました
さらに、あまり知られていない仕組みがあります。自己都合で辞めた方でも、離職期間中などに教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されます。待期7日が終われば受け取れるということです。学び直しを考えているなら、順番を意識する価値があります。
ただし、5年以内に3回以上自己都合で退職している場合は、給付制限が3か月になります。
もうひとつ大事なことがあります。失業給付は「働ける状態」であることが前提です。病気やケガで働けない期間は受給できません。その場合は受給期間の延長申請(最長4年)を必ずしてください。回復してから受け取れるようになります。詳しくは働けなくなったとき、収入はどうなるのかに書きました。
【就職が決まったら】再就職手当 ★★
失業給付を残して再就職すると、残りの一部がまとめて支給されます。
- 所定給付日数を3分の2以上残して就職——支給残日数×基本手当日額×70%
- 3分の1以上残して就職——同じく60%
待期7日を過ぎていること、1年以上の雇用が見込まれることなどが条件です。早く決まるほど得をする設計になっています。「もらえるだけもらってから就職しよう」と考えると、かえって損をすることがあります。
また、再就職して賃金が下がった場合は、就業促進定着手当という制度もあります。再就職から6か月経過後に申請できます。
【翌年】確定申告と住民税 ★★★
ここが最も見落とされます。
年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、税金を払いすぎている可能性が高いです。給与から天引きされる所得税は「1年間働く前提」で計算されているためです。確定申告をすれば、その分が還付されます。
あわせて申告できるものも確認してください。国民健康保険料・国民年金保険料は全額が社会保険料控除になります。医療費控除、生命保険料控除も同様です。
そして、覚悟しておくべきことがひとつ。住民税は前年の所得に対してかかります。会社員のときは給与から天引きされていたので実感が薄いのですが、退職すると自分で納めることになります。収入がなくなった年に、現役時代の所得を基準にした請求が届く——ここが退職1年目のいちばん苦しいところです。
まとめ
- 退職前——有給の残日数、退職金規程、離職票が必要だと伝える ★★
- 退職後すぐ——離職票・源泉徴収票・健康保険資格喪失証明書を受け取る。届かなければ催促、それでもだめならハローワークへ ★★★
- 20日以内——健康保険は扶養・任意継続・国保の3択。非自発的失業者なら国保が30%計算で安くなる ★★★
- 14日以内——国民年金へ切替。払えないなら未納にせず失業特例免除を ★★
- 離職票が届いたら——ハローワークへ。自己都合の給付制限は1か月に短縮、教育訓練を受ければ解除。病気なら受給期間の延長を ★★★
- 就職が決まったら——再就職手当(残日数2/3以上で70%、1/3以上で60%) ★★
- 翌年——確定申告で還付の可能性大。住民税は前年所得で来る ★★★
並べてみると、手続きの大半は「知っているかどうか」だけで金額が変わります。難しい判断はほとんどありません。期限に間に合わせて、窓口で聞く。それだけです。
退職は、人生の中でそう何度もない場面です。慌ただしい時期ですが、最初の20日だけは意識して動いてください。あとから取り返せないのは、そこだけですから。
あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づく個人の考えであり、制度の内容や金額は改定される場合があります。保険料や給付の可否は個別の状況によって異なります。健康保険は加入先の健保・お住まいの市区町村、年金は年金事務所、失業給付はハローワーク、税金は税務署にご確認ください。

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