2026年7月、骨太の方針2026が閣議決定されました。正式には「経済財政運営と改革の基本方針」。政府がこれから何にお金を使い、どんな制度改正を進めるかを示す文書です。
介護・福祉に関する記述を読み込んでみました。そこから見えてきたのは——介護にかかるお金は、確実に増えていくということ。そして、それでもまだマシかもしれないという、もっと重い現実でした。
※本記事は2026年8月時点の内容にもとづく、私個人の読み解きです。骨太の方針は「決定」ではなく「方向性」を示すものであり、実際の制度は今後の議論で変わります。
賃上げは必要。でも、財源はどこから
骨太2026には、次期の介護報酬改定に向けて「他職種と遜色のない処遇改善」を目指すと明記されています。
ありがたい話です。ただ、正直に思ったことがあります。「他職種」とは、どの職種と比べてなのでしょうか。
介護の給料が上がってほしいのは、この業界にいる誰もが願うことです。でも、介護報酬の原資は税金と保険料です。企業が売上を伸ばして給料を上げるのとは、根本的に仕組みが違います(この構造は処遇改善加算の記事に詳しく書きました)。
財源が限られている以上、大幅な上昇は見込みにくい。それが現実だと思っています。
介護という仕事には、どこでも働ける、需要が高い、誰でも入りやすいという強みがあります。潰しが効く。裏を返せば、その代償が給料の低さなのだと感じます。
賃上げの原資は、利用者が払っている
ここで見落とされがちなことがあります。
職員の賃上げに使われる処遇改善加算は、利用者が支払う利用料に上乗せされているということです。
2026年6月には加算の区分が再編され、率も引き上げられました。つまり——職員の給料を上げるほど、利用者の負担も増えるという構造になっています。
ただ、この説明を利用者さんにすると、たいてい「で、いくら増えるの?」と聞かれます。単位や%で言われても、誰も分かりません。
私は、こう伝えるようにしています。
「処遇改善加算の率が上がりましたが、1割負担の方なら、デイサービスを週1回で月50〜70円、週2回なら月100〜150円くらいの増加がすると思います。」
訪問介護なら、身体介護(1時間程度)で1回あたり20円台、生活援助(45分程度)で10円弱の増加という感覚です。
金額の目安を持っておくと、説明がぐっとラクになります。「よく分からないけど上がった」という不安が、いちばん人を不安にさせるからです。
2割負担の見直し——これは桁が違う
しかし、本当に大きいのはこちらです。
骨太2026では、介護保険の2割負担の判断基準の見直しについて、2026年度中に結論を出すとされています。対象範囲が広がる可能性があるということです。
これがどれだけのことか、具体的に考えてみます。
訪問介護でお風呂に入れてもらう。1割負担なら1回あたり約570円。それが2割になれば約1,140円です。単純に倍になります。
要介護1で月の限度額は約16,700単位、要介護5なら約36,200単位。1単位を約10円と考えると、限度額いっぱいまで使えば要介護5で月36万円分のサービスです。その1割か2割か——月に3.6万円の差になります。
さらに忘れてはいけないのが、処遇改善加算などは限度額の外にあるということ。これも同じように倍になります。
年金では払えない。そういう方が確実に出てきます。
だから「持っている人から」という話になる
では、その財源をどこから取るのか。
ここで出てくるのが、金融所得・資産を負担に反映するという話です。骨太2026にも、医療・介護保険における金融所得・資産の扱いについて改革を進めると書かれています。
年金収入は少ないけれど、株や預貯金はしっかりある——そういう方に、相応の負担をしてもらおうという考え方です。「持っている人から取る」。身も蓋もない言い方ですが、そういうことです。
この話は健康保険料の記事にも書きました。同じ流れが、介護保険にも及ぼうとしています。
それでも、まだマシだと思う理由
ここまで読んで、暗い気持ちになったかもしれません。私も書きながらそうです。
でも——お金で済むなら、まだマシです。
なぜか。お金を払っても、介護してくれる人がいないという未来が、すぐそこまで来ているからです。
骨太2026を読んでいて、私がいちばん重く感じたのは、実はこの部分でした。
- 介護DX・AI活用・生産性向上——少ない人手で回せるようにする
- 人材の確保・定着、業務効率化、勤務環境改善——辞めさせない、集める
- 経営の協働化・大規模化——小さい事業所ではもたない
- 地域包括ケアの深化、中山間地域での柔軟な提供
特に最後の一文の意味を、私はこう読みました。「もう事業所がない地域があるから、地域で協力し合って埋め合わせてくれ」ということです。
つまり、政府も分かっているのです。このままでは、介護サービスそのものが成り立たなくなると。
お金を払えばサービスが受けられる、という前提自体が崩れかけている。負担が増えるだけで済むなら、それはまだ幸せなほうだ——そう思うようになりました。
これからの世代は、どうすればいいのか
では、私たちの世代はどう備えればいいのか。
私の考えは、こうです。自費で、自分の受けたいサービスを選べるようにしておく。
介護保険のサービスは、今後さらに絞られていく可能性があります。使える回数、使える内容、そして自己負担割合。制度の枠内だけでは、望む生活が守れなくなるかもしれません。
できないことを、お金で解決する。冷たく聞こえるかもしれませんが、それが選択肢を持つということです。施設を選べる、サービスを増やせる、家族に負担をかけずに済む——お金があるかどうかで、選べる施設の幅は本当に変わります。
だからこそ、お金の勉強が要るのだと思います。
若いうちからの積立、固定費の見直し、制度を知ること。地味ですが、これが20年後30年後の自分の生活の質を決めます(始め方はこちらの記事に書きました)。
そして同時に、介護を受けずに済む期間を延ばすこと。歩く、食べる、口の健康を保つ。これもまた、確実な備えです(骨折予防の記事)。
まとめ
- 骨太2026は「決定」ではなく方向性。ただし今後の制度改正の道筋は見える。
- 処遇改善で職員の給料を上げれば、その分は利用者の負担になる。1割負担ならデイ週2回で月100〜150円程度が目安。
- 本当に大きいのは2割負担の対象拡大。単純に倍、限度額外の加算も倍になる。
- 財源として金融所得・資産を反映する方向。「持っている人から」という流れ。
- それでも——お金で済むならまだマシ。DX・人材確保・地域包括ケアの記述は「もう人がいない」という現実の裏返し。
- これからの世代は、自費で選べる備えを。そして介護を受けずに済む期間を延ばすこと。
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく個人の考えです。骨太の方針は制度改正の方向性を示すもので、内容は今後の議論で変わります。単位数・加算率・自己負担額は改定やお住まいの地域、個々の状況で異なります。正確な負担額は担当のケアマネジャーや市区町村の窓口にご確認ください。
制度は変わります。読んで、考えて、備える。それしかありません。

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