「パーソナルトレーニングの契約トラブルが増えている」というニュースを見ました。国民生活センターが2026年10月7日に注意を呼びかけたもので、相談は2021年度の495件から、2025年度には1,457件まで増えています。
私自身、ピラティスのトレーニングを受けています。一人ひとりに合わせて見てもらえるパーソナルのトレーニングは、良いことが多いと思っています。ですから、この記事は「パーソナルはやめましょう」という話ではありません。
ただ、良いものだからこそ、誰に教わるかで大きく変わります。そして、相手を信頼しているときほど、契約の中身は確認しにくくなります。さらに、あまり知られていないことですが、パーソナルジムの契約は、原則としてクーリング・オフ(契約後の一定期間なら、理由を問わずにやめられる制度)ができません。
先に結論です。
- パーソナルジムの契約は、原則クーリング・オフできません。店で契約する継続サービスのうち、対象は法律で決められた7つだけで、ジムは入っていないからです。
- 一緒に買ったサプリなどの商品も、原則できません。エステも一緒に契約した場合や、路上で呼び止められて店に連れて行かれた場合などは例外です。
- 一番の対策は、その場で契約しないことです。「帰って考えます」と言うだけでなく、実際に帰るところまで決めておきましょう。
パーソナルトレーニングの相談は、4年で約3倍に
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2021年度 | 495件 |
| 2022年度 | 722件 |
| 2023年度 | 861件 |
| 2024年度 | 885件 |
| 2025年度 | 1,457件 |
2026年度も8月末までに537件と、前年同期の468件を上回っています。2025年度の相談を見ると、女性が85.2%を占め、平均年齢は36.7歳です。契約金額は、10万円以上50万円未満が43.2%、50万円以上が11.6%で、10万円以上が半数を超えています。
相談事例に見られる流れ
多いのは、SNS広告や無料体験をきっかけに店へ行き、体験後のカウンセリングで「今日なら安い」と契約を勧められる流れです。国民生活センターは、次のような事例を紹介しています。
- 約1時間の体験の後、約2時間の勧誘を受けた。「いったん考えたい」と何度伝えても引き下がってもらえず、仕方なく契約した
- 約50万円のプランを断ると「家に帰ったら絶対契約しないから」と勧誘が続いた。狭い店で担当者と2人きりで怖くなり、契約すると言ってしまった
- トレーニングの申し込みに続いて、サプリとエステも「本日であれば特別価格」と勧められた。総額は約12万円で、タブレットの契約内容をよく確認せずにサインした
- 1年契約を途中で解約すると、割引の差額に加え、契約書に記載が見当たらない入会金も含めて約8万5,000円を請求された
- 10回3万円を一括で払い、3回通ったところで予約が取れなくなった。返金すると言われたが、トレーナーと連絡がつかなくなった
パーソナルの価値は、コーチの人柄で大きく変わる
パーソナルの良さは、体の状態や生活に合わせて内容を考えてもらえることです。動きの癖をその場で直してもらえるので、自己流で続けるより安心な面もあります。腰や膝を守る筋肉は、年齢を重ねるほど大切になりますから、運動にお金を使うこと自体は良い投資だと私は考えています。
ただ、一対一のサービスなので、内容は担当する人に大きく左右されます。だからこそ、コーチの人柄が大事です。私は、次の3つの場面に人柄が出ると思っています。
人柄を見る3つの場面
- 「持ち帰って考えます」と言ったとき:「ゆっくり考えてください」と言えるかどうか。ここで引き留め続ける人に、長く体を預けるのは不安です
- 解約の話をしたとき:「途中でやめたら、いくら戻りますか」という質問に、嫌な顔をせず金額で答えてくれるかどうか
- 体の話をしたとき:痛みや持病、飲んでいる薬を確認し、必要なら「先に医師に相談してください」と言えるかどうか
人柄が良くても、契約は別に確認する
ここは私からの注意点です。人柄で選ぶのは正しいと思いますが、それだけで契約を決めるのは危険です。国民生活センターも、自分に合ったトレーニングと、予算や通える頻度に合った契約は、同じとは限らないと指摘しています。
担当者が途中で変わることもありますし、一対一で信頼関係ができるほど、断りにくくもなります。勧めている人が悪い人とは限らず、店で決まった流れに沿って案内しているだけのこともあるでしょう。人で選んで、契約は書面で確かめる。この2つは分けて考えましょう。
なぜパーソナルジムはクーリング・オフできないのか
クーリング・オフは、どんな契約にも使える制度ではありません。自分で店に行って契約する継続サービスの場合、特定商取引法で対象とされているのは次の7つだけです(特定継続的役務提供といいます)。
| サービス | 期間 | 金額 |
|---|---|---|
| エステ、美容医療 | 1か月を超える | 5万円を超える |
| 語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介 | 2か月を超える | 5万円を超える |
パーソナルトレーニングは、ここに入っていません。ピラティスやヨガの教室、スポーツジムも同じです。金額が高くても、期間が長くても、この7つに当たらなければ対象外です。「8日以内なら大丈夫」と思って契約すると、後で困ることになります。
例外:店の外で勧誘された場合
パーソナルジムでも、勧誘のされ方によっては「訪問販売」に当たり、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフできます。
- 路上で呼び止められ、そのまま店に連れて行かれて契約した(キャッチセールス)
- 電話やメールなどで、勧誘が目的であることを告げずに店へ呼び出された(アポイントメントセールス)
- 自宅など、店以外の場所で契約した
注意したいのは、SNS広告を見て、自分で無料体験に申し込んだ場合は、これに当たりにくいことです。呼び出しの方法を定めた条文に、ウェブ広告が入っていないためです。つまり、よくある流れほど、この例外は使いにくいということです。実際に当たるかどうかは、個別の事情で判断されます。
クーリング・オフできないもの一覧
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 自分で店に行って買う・契約する | 店での買い物、パーソナルジム、スポーツジムなど(上の7サービスを除く) |
| 通信販売 | ネット通販、テレビ通販、カタログ。返品できるかは広告の返品特約に従う。特約の表示がなければ、届いてから8日以内は返品でき、送料は自己負担 |
| 自動車 | 乗用車の購入、リース(二輪は除く) |
| すぐに提供が必要なもの | 電気、熱供給、葬式、ガスの一部 |
| 3,000円未満の現金取引 | 訪問販売などで、商品を受け取り、同時に全額を払った場合 |
| 使ってしまった消耗品 | 健康食品、化粧品、洗剤など。店員に使わされた場合は別 |
| 仕事のための契約 | 営業のために結んだ契約 |
反対に、クーリング・オフできるもの
- 8日間:訪問販売(キャッチセールスなどを含む)、電話勧誘販売、上の7サービス、訪問購入(自宅などに来る買い取り)
- 20日間:マルチ商法(連鎖販売取引)、内職・モニター商法(業務提供誘引販売取引)
- 別の法律で決まっているもの:店の外で契約した保険(8日)、店の外で買った宅地建物(8日)、投資顧問(10日)など。いずれも条件があります
期間は、原則として法律で決められた書面を受け取った日から数えます。やめる連絡は、書面か電子メールなどの記録が残る方法で行います。
勧められたサプリや商品は、クーリング・オフできる?
ジムで勧められるサプリやプロテイン、トレーニング用品も、原則としてクーリング・オフできません。ただし、買ったときの状況で変わります。
| 買ったときの状況 | サプリなどの商品 |
|---|---|
| 自分で予約して来店し、トレーニングと一緒に買った | できない |
| 同じ店でエステも契約した(条件あり) | エステと一緒に解除できる可能性がある |
| 路上で呼び止められた、目的を告げずに呼び出された | できる(訪問販売、8日間) |
同じ店で同じ日に買っても、エステと一緒なら解除できる可能性があり、トレーニングと一緒なら原則できない。この差は知っておいて損はありません。
エステと一緒に解除できる条件
- エステの契約が1か月を超え、商品も含めた総額が5万円を超えている
- エステの契約を、書面を受け取ってから8日以内に解除する(商品だけの解除はできません)
- 商品が、サプリなど口に入れるもの、化粧品・石けん・浴用剤、下着、美顔器などに当たる(ダンベルやトレーニングウェアは含まれません)
- サプリや化粧品は、開封して使っていない(店員に使わされた場合は別)
国民生活センターの発表は、関連サービスがクーリング・オフの対象になる可能性には触れていますが、商品の扱いまでは書いていません。上の整理は、特定商取引法の条文を私が読み取ったものです。実際の判断は、消費生活センターに確認してください。
商品を勧められたときの対応
- その場で買いません。体に必要なものなら、来月でも必要です。「今日だけ」は、商品の価値とは関係がありません
- 必要な理由を聞きます。「これを使わないと、トレーニングの効果は出ませんか」と聞いてみましょう。「併用したほうがいい」と「ないと困る」は別です
- 値段を調べます。商品名を控えて帰り、同じものや似た成分のものと比べましょう
- 薬を飲んでいる人は、医師か薬剤師に確認します。持病がある人も同じです。飲み合わせや病気への影響を判断するのは、トレーナーの役割ではありません
- 定期購入や分割払いではないか確認します。分割払いなら手数料を含めた総額を見ましょう。金利は、敵に回すと大きな負担になります
一番の対策は、その場で契約しないこと
「帰って考えます」は、とても良い言葉です。ただ、先ほどの事例では「いったん考えたい」と何度伝えても勧誘が続き、「家に帰ったら絶対契約しない」とまで言われています。言葉だけで終わらせず、実際に帰るところまで準備しておくことが大切です。
行く前に決めておくこと
- 体験の日は、何を言われても契約しないと決めておく
- 料金表や解約条件を、できれば体験の前に見ておく
- 体験の後に予定を入れて、最初に「○時に出ます」と伝える
- 家族や友人に、行き先と終わる時間を伝えておく
言われたときの返し方
| 言われること | 返し方の例 |
|---|---|
| 今日だけの価格です | 今日だけなら、今回は見送ります |
| 家に帰ったら、やらなくなりますよ | それでも、今日は決めません |
| あなたにはこのプランが必要です | 書面をいただいて、持ち帰って確認します |
| 何が不安ですか? | 家計を見てから決めます |
| 皆さん、このサプリも使っています | 今日はトレーニングのことだけにします |
コツは、説明しすぎないことです。理由を詳しく話すと、一つひとつに反論が返ってきます。同じ言葉を繰り返して構いません。「今日だけの割引」も、落ち着いて計算してみましょう。入会金2万円が無料になっても、月3万円の1年契約が合わなければ、36万円を払うことになります。
帰らせてもらえないとき
「帰ります」とはっきり言って、席を立ちましょう。これは、後で自分を守ることにもつながります。消費者契約法では、帰る意思を示したのに帰らせてもらえず、困って契約した場合、その契約を取り消せるとされています。
「考えます」よりも「帰ります」のほうが、意思がはっきり伝わります。時刻と言われたことも、後でメモしておきましょう。怖いと感じたら店の外へ出て、身の危険を感じるときは110番してください。
持ち帰ったら確認すること
契約書や料金表をもらって、家で次の点を確かめましょう。答えがあいまいな項目は、書面かメールで確認すると後に残ります。
- 総額:入会金、月会費、オプション、商品まで含めていくらか
- 期間と回数:何か月、何回か。余った回数に期限はあるか
- 自動更新:更新があるか。いつまでに申し出れば止められるか
- 途中解約:今やめたらいくら戻るか、解約料はいくらか。金額で確認する
- 割引の扱い:途中でやめると割引はどうなるか。入会金を請求されないか
- 解約の手続き:メールでできるか、来店が必要か、書類はどこでもらうか
- 予約:希望の曜日や時間に取れるか、取れないときはどうなるか
- 担当者:変更できるか。担当者が辞めたらどうなるか
契約するなら、小さく始める
私が足したいのは、続けられると分かるまでは、短い期間と少ない回数から始めるということです。月払いなら、合わないと思ったときの負担を抑えられます。まとめ払いは割安に見えますが、通えなくなったときや、相手と連絡がつかなくなったときに、お金が戻りにくくなります。契約書の控えは、必ず受け取っておきましょう。
予算に合う契約が見つからなければ、まずはウォーキングのように、お金のかからない運動を続ける方法もあります。パーソナルは、やりたい目的がはっきりしてからでも遅くありません。
契約してしまった後にできること
クーリング・オフができなくても、やめられないとは限りません。早く動くほど選択肢が残ります。
- 契約書と利用規約を確認します。解約の条件、期限、解約料を見ます。店の外での勧誘やエステの契約があれば、8日以内かどうかも確かめます
- 経緯を書き出します。日時、言われたこと、もらった書面をまとめ、メッセージも保存します
- 消費者ホットライン188に電話します。お住まいの地域の消費生活センターなどを案内してもらえます。店に連絡する前でも構いません
消費者契約法で取り消せる可能性がある場合
- 「帰りたい」と伝えたのに帰らせてもらえず、困って契約した
- 重要なことについて、事実と違う説明を受けて契約した
- 通常必要な分量を著しく超えると店が知りながら、勧誘されて契約した
取り消せる期間は、追認できるとき(帰らせてもらえなかった場合は、その状況を脱したときなど)から1年、契約から5年です。商品の購入にも使えます。また、解約料のうち、事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効とされています。「解約料がある」と言われても、そのまま払う前に相談しましょう。実際に当てはまるかは、個別の事情で判断されます。
離れて暮らす親の契約にも、同じ目を向ける
ここまではジムの話でしたが、ケアマネとして伝えておきたいのは親世代のことです。自宅への訪問販売や電話勧誘は、クーリング・オフの対象です。ただし、期間に限りがあり、健康食品は使ってしまうと対象外になることがあります。
また、訪問販売で、日常生活に通常必要な量を著しく超える商品を買わされた場合は、契約から1年以内なら解除できる仕組みもあります。実家に帰ったときは、見慣れない契約書や、同じ健康食品の箱がたくさんないか、見ておきましょう。
気になるものがあれば、親を責めずに188へ相談してください。介護サービスを使っている場合は担当のケアマネジャーに、それ以外なら地域包括支援センターにも相談できます。
まとめ
- パーソナルジムの契約は、原則クーリング・オフできない。対象の7サービスに入っていないから
- 一緒に買った商品も原則できない。エステと一緒の場合や、店の外で勧誘された場合は例外がある
- パーソナルの価値はコーチの人柄で大きく変わる。ただし、人で選んで、契約は書面で確かめる
- 一番の対策は、その場で契約しないこと。「考えます」で終わらず、帰るところまで準備する
- 困ったら、諦める前に188へ
良いコーチに出会えれば、体は変わっていきます。良いコーチなら、あなたが家に帰って考える時間も待ってくれるはずです。その日に決めなかったことで失うものは、案外少ないのではないでしょうか。
あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。
※本記事は2026年11月時点の情報をもとにした一般的な解説です。個別の契約についての判断は、消費生活センターや弁護士などの専門家にご確認ください。

コメント