身体拘束の研修は、年2回以上と新規採用時。委員会は3か月に1回以上。そして指針の整備。
ここまでは、よく知られています。ですが、これが義務になっているのは、施設系・居住系・短期入所系・多機能系のサービスだけです。デイサービスや訪問介護には、身体拘束の委員会・指針・研修の義務はありません。
一方で、令和6年度からは、デイサービスや訪問介護を含むすべての介護サービスで、身体拘束の原則禁止と、行った場合の記録が基準に定められました。
この記事では、サービスごとに何が求められているのかを整理し、職員に伝えたい「3つのロック」と「緊急やむを得ない場合」の考え方をまとめます。記事の最後で、研修テキスト・指針・様式集を無料で配布しています。
身体拘束で求められていることは、サービスによって違う
| 項目 | 施設系・居住系・短期入所系・多機能系 | 通所系・訪問系など |
|---|---|---|
| 身体拘束の原則禁止 | 必要 | 必要(令和6年度から) |
| 緊急やむを得ず行った場合の記録(2年間保存) | 必要 | 必要 |
| 委員会(3か月に1回以上)と結果の周知 | 必要 | 義務ではない |
| 指針の整備 | 必要 | 義務ではない |
| 研修(年2回以上+新規採用時) | 必要 | 義務ではない |
| 行っていない場合の減算 | 施設系・居住系は10%、短期入所系・多機能系は1% | なし |
左の列にあたるのは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設、グループホーム、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護などです。
混同されやすいのが、虐待の防止のための研修です。こちらはすべてのサービスが対象で、年1回以上(施設系・居住系は年2回以上)、新規採用時にも必ず行います。「身体拘束の研修は全事業所で年1回以上」という説明を見かけることがありますが、それは虐待の防止の研修と混ざったものです。
デイサービスや訪問介護では、身体拘束の研修を別に行う必要はありません。ただ、手続きを経ない身体拘束は、原則として高齢者虐待にあたります。虐待の防止の研修の中で、身体拘束も一緒に扱うのが現実的です。虐待の防止の措置については、虐待防止の書類、そろっているのに防げない理由でまとめています。
身体拘束とは「本人の行動の自由を制限すること」
身体拘束と聞くと、ひもやベルトで縛る場面を思い浮かべるかもしれません。厚生労働省の手引きは、身体拘束を「本人の行動の自由を制限すること」としています。ベッドを柵で囲む、立ち上がれないいすに座らせる、つなぎ服を着せる、自分で開けられない部屋に入れる。こうした行為も身体拘束にあたります。
職員に伝えるときは、身体拘束を3つに分けた「3つのロック」という考え方が役に立ちます。法令の言葉ではありませんが、自分のケアを振り返るきっかけになります。
- フィジカルロック(体の拘束):道具や体で動きを制限する。ベッド柵、腰ベルト、車いすテーブル、つなぎ服など
- ドラッグロック(薬の拘束):行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に使う。薬そのものではなく、「落ち着かせたい」という職員側の目的が問題になる
- スピーチロック(言葉の拘束):「座ってて」「ちょっと待って」「動かないで」と、理由を聞かずに言葉で止める
スピーチロックは、法令で定められた身体拘束ではありません。ですが、言葉で行動を止め続けることは、行動の自由を制限する点で同じです。内容によっては心理的虐待にもあたります。国の手引きでも、「ちょっと待ってね」などの言い換えに取り組む事業所の例が紹介されています。
家族が同意していても、身体拘束の理由にはならない
身体拘束が例外として認められるのは、本人や他の利用者の生命・身体を守るため「緊急やむを得ない場合」だけです。次の3つの要件を、すべて満たす必要があります。
- 切迫性:本人や他の利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体拘束以外に、代わりの方法がない
- 一時性:身体拘束が一時的である
判断は職員個人ではなく、組織として行います。本人・家族に内容や期間を詳しく説明し、行っている間は様子を観察して、要件を満たさなくなったら直ちに解除します。そして、態様と時間、心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録します。
ここで気をつけたいのが、家族の同意は、身体拘束を行う根拠にはならないことです。「家族が望んでいるから」「本人が『いいよ』と言ったから」は、理由になりません。根拠になるのは3つの要件だけです。同意するかどうかは家族が決めることで、同意されない場合は、改めて話し合い、代わりの方法を一緒に考えます。
「転倒を防ぐためなら仕方ない」「人手が足りないから仕方ない」も、よくある誤解です。身体拘束をされた人が無理に立ち上がって、車いすごと転倒することもあります。同じ職員の数でも、身体拘束をしていない事業所もあります。まず、立ち上がる理由や落ち着かない理由を探すことが、身体拘束をしないケアの出発点です。
研修テキスト・指針・様式集を配布しています
ここまでの内容を、事業所でそのまま使える形にまとめました。厚生労働省の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和6年3月)と、運営基準の解釈通知をもとにしています。Word版は事業所名などを書き換えて使えます。
研修テキスト
- 身体拘束廃止・防止 研修テキスト(7ページ・60分):身体拘束とは(11の行為と判断のポイント)、3つのロック(ドラッグロック・スピーチロックの節つき)、身体拘束の弊害とよくある誤解、緊急やむを得ない場合の3つの要件と手続き、場面ごとの身体拘束をしないケア、受講報告シート。施設系などの年2回の研修に使えるほか、通所系・訪問系では虐待の防止の研修として使えます
指針と様式集
- 身体的拘束等の適正化のための指針(5ページ):第1部 指針(解釈通知の7項目を同じ順番で記載)、第2部 緊急やむを得ない場合の手続きマニュアル(身体拘束をしない方法の確認、手続きの流れ、3つの要件で確かめること、記録すること、説明のしかた)、別紙 身体的拘束等の報告書
- 身体的拘束適正化検討委員会・研修の様式集(9ページ):担当者・委員会の構成、委員会の開催記録、職員への周知記録、年間計画・実績表、研修の実施報告書、緊急やむを得ない身体拘束の検討記録、本人・家族への説明書(同意するかどうかを選ぶ欄つき)、経過観察・再検討の記録。検討記録・説明書・経過観察の記録は、記録が義務になっている通所系・訪問系でも使えます
会員登録やメールアドレスの入力は不要です。他の研修資料は、介護事業所向け 無料研修資料のページにまとめています。
まとめ
- 身体拘束の委員会・指針・研修が義務なのは、施設系・居住系・短期入所系・多機能系のサービス
- 原則禁止と、行った場合の記録(2年間保存)は、デイサービスや訪問介護を含むすべてのサービスに必要
- 「全事業所で年1回以上+新規採用時」は、虐待の防止の研修のこと。通所系・訪問系は、その中で身体拘束も扱う
- 身体拘束とは「本人の行動の自由を制限すること」。体・薬・言葉の3つのロックがある
- 緊急やむを得ない場合は、切迫性・非代替性・一時性をすべて満たし、組織で判断し、説明し、記録する
- 家族の同意は、身体拘束の根拠にならない。まず理由を探すことが、身体拘束をしないケアの出発点
身体拘束をなくす取り組みは、一人ではできません。「これは身体拘束にあたるのでは」と迷ったときに、職員が相談できる事業所であること。書類をそろえることは、その土台づくりです。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。自治体の条例で記録の保存期間を5年などと定めている場合があります。詳しくは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。

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