誤嚥性肺炎を防ぐ体操|インフルの季節に、呼吸と喉を鍛える10分

介護の知識

インフルエンザが流行り始め、予防接種も始まりました。高齢の家族がいる方、介護の現場で働く方は、毎年この時期になると気が抜けないと思います。

先にお伝えしておくと、体操でインフルエンザそのものを防ぐことはできません。インフルエンザの予防は、予防接種、手洗い、換気が基本です。

ですが、体操にもできることがあります。それは、肺炎になりにくい体をつくることです。この記事では、その理由と、椅子に座ったままできる「呼吸と喉の体操」10分をまとめました。デイサービスで使える1枚のプリントも、無料で配布しています。

肺炎は、日本人の死因の5位と6位

厚生労働省の人口動態統計(令和7年・概数)によると、肺炎で亡くなった人は84,013人で死因の第5位、誤嚥性肺炎で亡くなった人は64,396人で第6位でした。

2つを合わせると約14.8万人です。第4位の脳血管疾患(100,355人)よりも多くなります。そして、肺炎で亡くなる人のほとんどは高齢者です。

高齢者は、インフルエンザにかかったあと、それをきっかけに肺炎を起こすことがあります。また、年を取ると飲み込む力が弱くなり、食べ物や唾液が気管に入って起きる誤嚥性肺炎も増えていきます。インフルエンザで体力が落ちているときは、なおさらです。

肺炎を遠ざける、3つの力

肺炎になりにくい体をつくるために、保っておきたい力は3つあります。

  • 飲み込む力:食べ物や唾液を、気管ではなく食道へ送る力。喉の筋肉が弱ると、むせやすくなる
  • 吐き出す力:気管に入りかけた物を、咳で外に出す力。咳が弱いと、入った物を出せない
  • 深い呼吸:胸を大きく動かして呼吸する力。胸や背中が固くなると、呼吸が浅くなり、咳の力も弱くなる

この3つは、使わなければ衰えますが、日々の体操で保つことが期待できます。今回の体操は、この3つに絞って組み立てました。

呼吸と喉の体操(10分)

椅子や車いすに座ったまま、道具なしでできます。1種目1分、全部で10分です。

順番種目ねらい
1首と肩をほぐす準備
2口すぼめ呼吸深い呼吸
3胸を開く深い呼吸
4ひねり・横倒し深い呼吸
5おでこ体操飲み込む力
6あご押し体操飲み込む力
7「ハッ」と吐く吐き出す力
8声を長く出す吐き出す力
9歌を1曲仕上げ
10深呼吸仕上げ

深い呼吸をつくる(1〜4)

最初に首と肩をほぐしたら、口すぼめ呼吸で、鼻から2秒吸って、口をすぼめて4秒かけてゆっくり吐きます。吐く時間を長くすると、自然と深く吸えるようになります。

続けて、両手を後ろで組んで胸を開き、体をひねったり横に倒したりして、固くなりがちな胸と背中を動かします。

飲み込む力を鍛える(5・6)

おでこ体操は、おでこに手のひらを当て、おへそをのぞき込むように頭で押し、手で押し返します。あご押し体操は、両手の親指をあごの下に当て、下を向くように力を入れて、親指で押し返します。どちらも、飲み込むときに使う喉の筋肉に力が入ります。5秒ずつ、声に出して数えながら行います。

吐き出す力を鍛える(7・8)

大きく息を吸って、「ハッ、ハッ」と強く短く吐きます。最後に「エヘン」と咳払いをします。咳をするときの動きの練習です。続けて「あーーー」と声を長く出し、何秒続くかを数えます。目標は10秒です。

楽しく仕上げる(9・10)

最後は、季節の歌や好きな歌を1曲、口を大きく開けて歌い、深呼吸で終わります。歌うことは、呼吸・発声・飲み込みの筋肉をまとめて使う、楽しい運動です。

無理のない範囲で行いましょう

・痛みや気分の悪さが出たら、すぐに止めて休みます。

・首に痛みやしびれがある方、めまいが出やすい方は、上を向かず、下を向く動きだけにします。

・押し合う体操は、息を止めずに、声を出して数えながら行います。

・「ハッ」と吐く練習は、強くしすぎないようにします。むせたら休みます。

一つひとつの動きの詳しい説明は、体操プログラムのページ「呼吸と喉の体操プログラム」にまとめています。

デイサービスで使うときのコツ

デイサービスの管理者として、現場で取り入れるときのポイントを挙げます。

  • 昼食の前に行う:飲み込む準備になり、食事のむせを減らすことが期待できます
  • 声を出して数える:押し合う体操で息を止めないための工夫です。みんなで数えると、場も盛り上がります
  • 「声の長さ」を記録してみる:何秒続いたかを毎回メモすると、本人の励みになり、体調の変化にも気づけます
  • 歌は、季節の歌や、その方の青春時代の歌を:知っている歌だと、自然と大きな声が出ます

口の周りの筋肉を鍛える「パタカラ体操」などは、「口・顔の体操プログラム」にあります。2つを日替わりで行うのもおすすめです。

プリントをダウンロード

呼吸と喉の体操(10分)A4・1枚

体操と一緒に、してほしいこと

  • 予防接種を受ける:インフルエンザは、65歳以上の方などが定期接種の対象です。肺炎球菌ワクチンも、65歳の方などが定期接種の対象になっています。費用や時期は、お住まいの市町村の案内で確認してください
  • 口の中を清潔に保つ:口の中の細菌が減ると、誤嚥しても肺炎になりにくくなります。歯みがきや入れ歯の手入れは、寝る前こそ大切です。歯と口の大切さは「歯は大事だよ」に書きました
  • 食後すぐに横にならない:食べた物が逆流して、気管に入ることがあります。食後しばらくは、体を起こして過ごします

まとめ

  • 体操でインフルエンザは防げないが、肺炎になりにくい体をつくることは期待できる
  • 肺炎と誤嚥性肺炎は、合わせると年間約14.8万人が亡くなる、日本人の大きな死因
  • 保ちたいのは、飲み込む力・吐き出す力・深い呼吸の3つ
  • 椅子に座ったまま10分。昼食前に行うのがおすすめ
  • 予防接種、口の中の清潔、食後すぐ横にならないことも一緒に

※本記事は2026年10月時点の情報をもとにしています。体操の効果には個人差があります。持病のある方は、主治医に相談してから行ってください。

参考資料

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