収入が減ったら、貯金を使い切る前に相談してください

介護の知識

収入が減ったとき、多くの方はまず貯金を取り崩します。そして「もう少し頑張れば戻るはず」と考えて、相談は後回しになります。

ただ、介護の相談を受けていて感じるのは、貯金を使い切ってから来られた方ほど、選べる手段が減っているということです。制度の多くは、生活が完全に行き詰まる前のほうが使いやすくできています。

今回は、収入が減ったときに使える制度をまとめます。★の数はお金への効き目です。

先に書いておくと、ここで紹介するのは失業した人だけのための制度ではありません。勤めを続けながら収入が落ちた方、病気で働けなくなった方、自営業で売上が減った方——それぞれに使えるものがあります。

なお、会社を辞めた直後で失業給付(雇用保険の基本手当)を受けられる方は、手続きの順番を退職後にやることにまとめています。病気やケガが理由なら働けなくなったとき、収入はどうなるのかもあわせてどうぞ。

まず、相談する場所は決まっています ★★★

制度ごとに窓口を探す必要はありません。入口はひとつです。

お住まいの自治体にある「自立相談支援機関」(生活困窮者自立支援制度の相談窓口)。

ここは全国すべての自治体に置かれています。名称は「くらしサポートセンター」「生活支援相談窓口」など地域によって違いますが、市区町村に問い合わせればすぐ分かります。

ここに行けば、家計の見直し、仕事探しの支援、次に説明する住居確保給付金の申請まで、まとめて相談できます。「どの制度が使えるか分からない」という状態のまま行って構いません。制度を選ぶのは、こちらの仕事ではなく窓口の仕事です。

家賃が払えないなら、住居確保給付金 ★★★

優先順位としては、これが最初です。

  • 家賃相当額が支給されます(上限あり。自治体が定める基準額まで)
  • 期間は原則3か月。要件を満たせば3か月ごとに2回まで延長でき、最長9か月
  • 離職・廃業だけでなく、休業など「自分の責任ではない理由」での収入減も対象です
  • 収入・資産の要件があります
  • 2025年4月から制度が拡充され、転居費用の補助も始まりました

なぜ最優先かというと、住まいを失うと、その後のすべてが難しくなるからです。住所がなければ就職活動も進みませんし、各種の申請にも支障が出ます。家賃の滞納が始まる前に相談してください。

仕事を探すなら、求職者支援制度 ★★★

これは雇用保険を受けられない方のための制度です。自営業だった方、フリーランスの方、雇用保険の加入期間が足りない方、失業給付を受け終わった方が対象になります。

  • 職業訓練を無料で受けられます
  • あわせて職業訓練受講給付金として月10万円(+通所手当)が支給されます

ただし、要件は決してゆるくありません。本人の月収が8万円以下であることなどの収入要件に加え、資産の要件もあります。

そして見落とされやすいのが出席の要件です。原則としてすべての訓練日に出席することが求められ、やむを得ない理由がある場合でも8割以上の出席が必要になります。

ここは、介護をしながら利用しようとする方には特に確認してほしい点です。急な呼び出しや通院の付き添いが重なると、出席率を保てなくなることがあります。申し込む前に、訓練の日程と介護の予定を並べてみてください。

保険料と税金は、止める前に相談する ★★

収入が減ると、まず削りたくなるのが保険料や税金の支払いです。ですが、黙って止めるのがいちばん悪い手になります。

放置すれば延滞金がつき、最終的には差押えの対象になります。一方で、先に相談すれば、減免・免除・分割・猶予といった道があります。

  • 国民年金保険料——所得が下がれば免除や納付猶予を申請できます。未納と免除はまったく違います。未納のままだと、万一のときの障害年金や遺族年金まで受けられなくなることがあります
  • 国民健康保険料——自治体の判断で減免される場合があります。倒産・解雇・雇止めによる離職なら、前年の給与所得を30%とみなして計算する軽減も使えます
  • 介護保険料——同じく減免の制度があります
  • 住民税など——徴収の猶予や分割納付の相談ができます

払えないと伝えることは、悪いことではありません。窓口はそのためにあります。

自営業なら、税金の前払いを減らせる ★★

自営業やフリーランスの方に、意外と知られていない手続きがあります。

前年の所得税が一定額以上だった方は、その年の税金の一部を7月と11月に前払いすることになっています。これを予定納税といいます。やっかいなのは、前年の実績で金額が決まることです。今年の売上が落ちていても、去年の高い水準で請求が来ます。

ここで使えるのが「予定納税額の減額申請」です。その年の6月30日時点で見積もった所得税が、予定納税の基準額を下回る見込みであれば、前払いする額そのものを減らせます。

  • 第1期分の申請期限は7月15日
  • 第2期分だけなら11月15日まで(期限が休日にあたる場合は翌開庁日)
  • 6月末までの損益計算書や試算表を添えて、税務署へ提出します

これは減免ではなく、払いすぎを防ぐ手続きです。放っておいても確定申告で精算されますが、それまで資金が拘束されます。売上が落ちている時期の数十万円は重いので、心当たりがあれば税務署か税理士に相談してください。

貸付という選択肢もある ★★

社会福祉協議会が行っている生活福祉資金貸付という仕組みがあります。緊急小口資金や総合支援資金など、状況に応じた種類があります。

ただし、はっきり書いておきます。これは借金です。返済が必要です。

数か月先に収入が戻る見通しがあるなら、つなぎとして有効です。ですが、見通しが立たないのに借りると、後で返済に追われて状況が悪化します。その場合は、次に書く制度を先に検討したほうがいい場面もあります。

生活保護は、最後の手段ではありません ★★★

ここは誤解が多いところなので、丁寧に書きます。

生活保護の申請は、国民の権利です。恥ずかしいことでも、迷惑をかけることでもありません。よくある思い込みを、3つ挙げておきます。

①「持ち家があると使えない」——必ずしもそうではありません。住み続けている家であれば、認められる場合があります。

②「車があると使えない」——これも一律ではありません。仕事や通院に必要と認められれば、保有できる場合があります。

③「家族に必ず連絡がいく」——ここがいちばん誤解されています。

親族への扶養照会について、2021年に国の運用が見直されました。照会の対象は援助が期待できる親族に限られ、次のような事情があれば行わないという扱いになっています。

  • DVや虐待がある場合
  • 10年程度、音信不通が続いている場合
  • 借金や相続をめぐって対立している場合

また、本人が照会を拒む場合には、まず丁寧に事情を聞き取ることが求められています。「家族に知られたくないから申請できない」と諦める前に、その事情を窓口で伝えてください。

現場から思うこと

介護の相談を受けていると、介護をきっかけに収入が減っていくご家庭に出会います。勤務時間を減らし、やがて辞め、貯金を取り崩して、親の年金で暮らす。よくある流れです。

難しいのは、親の年金があるために「世帯としては収入がある」形になってしまうことです。実際には生活が回っていなくても、判断が複雑になります。だからこそ自己判断で諦めず、窓口で見てもらう必要があります。

そして、これが最も伝えたいことです。

相談は、早いほど選べる手段が多くなります。

家賃を滞納する前なら住居確保給付金が使えます。保険料を止める前なら免除が申請できます。貯金が残っているうちなら、貸付ではなく給付を選ぶ余地もあります。「まだ大丈夫」と思っているうちが、いちばん手が多い時期です。

まとめ

  • 入口は自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度の窓口)。全国の自治体にあり、まとめて相談できる
  • 住居確保給付金——家賃相当額を原則3か月、最長9か月。休業などによる収入減も対象。2025年4月に拡充
  • 求職者支援制度——雇用保険を受けられない人が、無料の訓練+月10万円。ただし出席要件が厳しいので介護との両立は要確認
  • 保険料や税金は黙って止めない。免除・減免・猶予がある。未納と免除はまったく違う
  • 自営業なら予定納税額の減額申請(第1期7月15日・第2期11月15日)。前年の実績で決まる前払いを減らせる
  • 生活福祉資金の貸付は借金。収入が戻る見通しがあるときに使う
  • 生活保護の申請は権利。持ち家や車があっても認められる場合がある。扶養照会は2021年に運用が見直され、行われない場合がある
  • 相談は早いほど、選べる手段が多い

お金の相談は、切り出すのに勇気がいります。ですが窓口の担当者にとっては、それが日常の業務です。特別なことを頼むわけではありません。

制度は、使われるために作られています。使える人が知らないまま終わることのほうが、よほどもったいないと思います。

※本記事は2026年8月時点の情報に基づく個人の考えであり、制度の内容・要件・金額は改定される場合があります。支給の可否や運用は自治体によって異なります。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村の窓口、自立相談支援機関、社会福祉協議会、ハローワークにご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました