毎日欠かさず血圧の薬を飲んでいるけれど、「なぜこの薬が必要なのか」をちゃんと説明できますか?「先生に言われたから」「ずっと飲んでいるから」という方も、実はとても多いんです。
私はケアマネジャーとしてデイサービスや居宅で多くの高齢者の方と関わってきましたが、自分の飲んでいる薬が何に効くのかを正確に理解している方は、決して多くありません。悪いことではないのですが、知らないままでいると、薬との付き合い方や身体のサインを見逃してしまうことがあります。
今回は、高齢者と血圧の関係について、現場で感じてきたことと最新のガイドラインを交えながら、分かりやすくお伝えします。
高齢者の血圧が高くなる、4つの理由
年を重ねると血圧が高くなりやすいのは、じつは自然なことです。主な原因は4つあります。
- ① 動脈硬化(血管の弾力性の低下)——これが最も大きな原因です。血管が硬くなると、心臓はより強い力で血液を送らなければならなくなります。
- ② ホルモンバランスの変化——血圧を調整するアンジオテンシンIIというホルモンの働きが変化し、血圧が上がりやすくなります。
- ③ 自律神経の衰え——若いころは夜になると血圧が自然に下がりますが、高齢になると夜も下がりにくくなったり、朝に急激に上昇したりするようになります。
- ④ 塩分への感受性の上昇——腎機能の低下により、塩分を摂ったときに血圧が上がりやすくなります。
「高齢者の血圧が高いのは当たり前」——担当医から聞いたこの言葉が今でも印象に残っています。ただ、「当たり前だから放置していい」という意味ではありません。リスクを知った上で、上手に管理することが大切です。
2025年最新ガイドライン——目標血圧はどう変わった?
日本高血圧学会(JSH)の2025年改訂版ガイドラインでは、降圧目標が全年齢で統一されました。
- 診察室血圧:130/80 mmHg 未満
- 家庭血圧:125/75 mmHg 未満
以前は75歳以上の高齢者は「150/90未満」が目標とされていましたが、大規模な研究で厳格な管理の効果が証明されたことから、年齢を問わず同じ目標値に改訂されました。
ただし、立ちくらみがある方・フレイル(虚弱)の方・頸動脈に狭窄がある方などは個別に対応する必要があります。数値だけで判断せず、その方の状態に合わせた管理が重要です。
よくある疑問についても整理しておきます。
- 薬を飲み始めたら一生飲み続けないといけない?——生活習慣の改善で減薬できることもあります。ただし自己判断での中止は危険です。必ず医師に相談を。
- 朝と夜で血圧が20mmHg以上違うのは異常?——正常範囲内のことが多いです。ただし、朝の血圧が極端に高い「早朝高血圧」は要注意です。
現場で見えてきた「薬と転倒」のジレンマ
施設や病院が何よりも恐れているのは、転倒・骨折です。
高齢者が骨折すると、手術・入院・リハビリと長い道のりになり、場合によってはそのまま寝たきりになってしまうこともあります。施設側にとっても非常に大きな影響を与える出来事です。
そのため、施設内で動き回りすぎる利用者の方に対して、薬で落ち着かせようとするケースが現実に存在します。その結果、ぼーっとした状態が続いて身体機能が低下し、在宅に戻ったときにかえって転倒リスクが高まる——という悲しいジレンマが生じることもあります。
「薬を飲ませたくないなら、24時間ご家族が見守ってください」——これは施設側の現実です。施設や病院を責めているわけではありません。ただ、施設に何を期待するか、家族として何ができるかを、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。
もう一つ、印象に残っている言葉があります。「飲む薬の量が増えるにつれて転倒リスクが増える」——これは多剤処方(複数の薬を同時に飲むこと)の問題です。降圧剤を含む複数の薬が相互作用することで、ふらつきや眠気が出やすくなります。デイサービスの利用者の方の多くが降圧剤を服用されている中で、この事実はとても重要だと感じています。
医師はなかなか言い出せない——だからあなたから動いてほしい
医師が自ら積極的に「薬を減らしましょう」と提案してくることは、あまり多くありません。「現状維持が安全」という判断があること、また限られた診察時間の中では、深い話し合いが難しい面もあります。
だからこそ、患者側から話を切り出すことが大切です。日頃から自分の血圧を記録しておき、「最近こういうデータです。薬の量について相談できますか?」と伝えることで、はじめて対話が生まれます。定期受診を「ただ薬をもらいに行く場」から「自分の健康を一緒に考える場」に変えていきましょう。
まとめ——薬と上手に付き合うための6つのポイント
- まずは医師に相談し、服薬管理をしっかり続ける
- 1日の血圧の流れを把握する(朝・昼・夕に測る習慣を)
- 食事・ウォーキング・趣味活動など生活習慣の改善を継続する
- 自分にとって「調子のいい時の血圧」を把握しておく
- 定期受診でデータを持参し、医師と一緒に見直す(自分から減薬の話を切り出すことも大事)
- 多剤処方が続いている場合は、転倒リスクの観点からも薬の見直しを医師と相談する
薬は大切な味方ですが、ただ飲み続けるだけでなく、自分の身体と向き合い、医師と対話しながら管理していくことが、これからの健康づくりにつながります。あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療行為の代替となるものではありません。血圧の管理や服薬の変更については、必ず担当医・専門家にご相談ください。


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