事故発生防止の指針、委員会、研修は年2回以上と新規採用時。そして担当者。
介護の事故防止で求められるこの4つの措置は、よく知られています。ですが、これが義務になっているのは、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院など)だけです。デイサービスや訪問介護には、事故防止の委員会・指針・研修の義務はありません。
一方で、事故が起きたときの連絡・記録・賠償は、すべての介護サービスに求められています。そして2025年11月、国は事故の予防と対応についての新しいガイドラインを出し、「防ぐことが難しい事故がある」と明確に示しました。
この記事では、サービスごとに何が求められているのかを整理し、職員に伝えたい事故防止の考え方をまとめます。記事の最後で、研修テキスト・指針・様式集を無料で配布しています。
事故防止で求められていることは、サービスによって違う
| 項目 | 介護保険施設(4サービス) | デイサービス・訪問介護など |
|---|---|---|
| 事故が起きたときの市町村・家族への連絡 | 必要 | 必要 |
| 事故の状況と処置の記録 | 必要 | 必要 |
| 賠償すべき事故の速やかな賠償 | 必要 | 必要 |
| 事故発生防止の指針 | 必要 | 義務ではない |
| 委員会の開催と、報告・改善の体制 | 必要 | 義務ではない |
| 研修(年2回以上+新規採用時) | 必要 | 義務ではない |
| 担当者の配置 | 必要 | 義務ではない |
| 措置がない場合の減算 | 安全管理体制未実施減算(1日5単位) | なし |
左の列の介護保険施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院の4つです。4つの措置のうち1つでも欠けていると、入所者全員について減算になります。
デイサービスや訪問介護でも、事故は起こります。指針や委員会の義務はなくても、ヒヤリ・ハットを集めて職員で共有する仕組みは、事故を減らすのに役立ちます。利用者やご家族から信頼される事業所であるためにも、施設と同じ考え方で取り組む価値はあります。
「防ぐことが難しい事故」がある、と国が示した
2025年11月に厚生労働省が出した「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」では、介護現場の事故を2つに分けて考えています。
- 対策を取り得る事故:職員のケアに伴う事故。誤薬や与薬漏れ、送迎車のドアでの挟み込み、介助中の皮膚剥離、食事形態の間違いなど。やるべきことをやれば防げる可能性が高い
- 防ぐことが難しい事故:利用者の活動や、加齢による機能の低下に伴う事故。一人で歩いているときの転倒、いつの間にかできた内出血など。自宅でも起こりうる
事業所は、利用者にとって生活の場です。事故を防ぐために行動を制限すれば、自立を妨げ、行き過ぎれば身体拘束にもなります。「転ばせないために、動かないようにする」は、本末転倒です。
ただし、「防ぐことが難しい事故」を言い訳にしてはいけません。大切なのは、対策を取り得る事故は確実に防ぎ、防ぐことが難しい事故でも、けがを小さくする工夫をすることです。そして、利用を始めるときに、本人やご家族と、その人のリスクと事業所で行う対策を共有しておくことが、事故が起きたときの信頼関係の土台になります。
ヒヤリ・ハットの報告は、責めるためではない
事故を防ぐための一番の情報源は、ヒヤリ・ハットです。床に薬が1錠落ちていた、車いすのブレーキがかかっていなかった、食事中に強くむせ込んだ。こうした「事故にはならなかったけれど、ヒヤリとしたこと」を集めることで、次の事故を防げます。
ところが、報告すると叱られると職員が感じていると、報告は出てこなくなります。ガイドラインでも、報告の目的は職員の責任を追及することではなく、ケアをよくすることだとしています。ヒヤリ・ハットの報告が多いのは、職員が危険に気づけているということです。報告が少ない事業所のほうが、むしろ心配です。
事故が起きたら、市町村への報告が必要なことも
事故が起きたときは、まず利用者の命と安全を守り、ご家族に速やかに連絡し、事故の状況と処置を記録します。これはすべてのサービスで同じです。
そのうえで、次の事故は市町村(保険者)への報告が求められています。
- 死亡に至った事故
- 医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要になった事故
報告は、事故の発生から5日以内に第一報を行い、原因の分析や再発防止策は、まとまり次第報告します。報告の様式は国が標準様式を示していて、2024年11月に電子的な報告を想定した形に改められました。市町村が独自に報告の対象を定めていることもあるので、自分の事業所がある市町村の決まりも確認しておきます。
「よく見守る」では、同じ事故は繰り返される
事故の報告書の再発防止策の欄に、「よく見守る」「注意する」と書いていないでしょうか。人手に限りがある中で、観察を増やすだけの対策は続きません。同じ事故は、また起きます。
大切なのは、根本の原因を探ることです。そのための方法の一つが「なぜなぜ分析」です。起きたことに対して「なぜ?」を繰り返します。
- 起きたこと:トイレに向かう廊下で転倒した
- なぜ? → 歩くときに介助が必要だったが、一人で移動していた
- なぜ? → 他の利用者の対応と重なり、職員が気づかなかった
- なぜ? → 入浴介助の時間帯は、フロアの職員が少なかった
- 対策 → 入浴介助の時間帯の職員配置や、トイレに誘う時間を見直す
原因は、利用者本人、環境、職員全員に共通すること、職員個人の4つに分けて考えると、対策の方向が見えてきます。決めた対策は実行し、しばらくしてから効果を確かめ、必要があれば見直します。
研修テキスト・指針・様式集を配布しています
ここまでの内容を、事業所でそのまま使える形にまとめました。厚生労働省の「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(令和7年11月)と、運営基準・解釈通知をもとにしています。Word版は事業所名などを書き換えて使えます。
研修テキスト
- 事故発生防止 研修テキスト(6ページ・60分):介護現場の事故の考え方(防げる事故と、防ぐことが難しい事故)、ヒヤリ・ハットと報告の意味、事故の種類ごとの予防(転倒・転落、誤嚥・窒息、異食、誤薬、内出血・皮膚剥離、送迎中の事故)、事故が起きたときの動き方、なぜなぜ分析のワーク、受講報告シート。施設の年2回の研修に使えるほか、デイサービスや訪問介護の資質向上の研修にも使えます
指針と様式集
- 事故発生の防止のための指針(5ページ):第1部 指針(解釈通知の7項目を同じ順番で記載)、第2部 事故発生時の対応マニュアル(7ステップの流れ、場面ごとの初めの動き、ご家族への連絡、市町村への報告、連絡先)、別紙 事故・ヒヤリ・ハット報告書(国の標準様式に書き写しやすい並び)
- 事故防止検討委員会・研修の様式集(7ページ):担当者・委員会の構成、委員会の開催記録(臨時の委員会も)、職員への周知記録、年間計画・実績表、研修の実施報告書、事故・ヒヤリ・ハットの集計表
会員登録やメールアドレスの入力は不要です。他の研修資料は、介護事業所向け 無料研修資料のページにまとめています。身体拘束の指針と研修については「身体拘束の研修は年2回。では、デイや訪問は?」で配布しています。
まとめ
- 事故防止の指針・委員会・研修・担当者が義務なのは、介護保険施設の4サービス。欠けると安全管理体制未実施減算
- 事故が起きたときの連絡・記録・賠償は、デイサービスや訪問介護を含むすべてのサービスに必要
- 国は「防ぐことが難しい事故」があると示した。防げる事故は確実に防ぎ、防ぐことが難しい事故はけがを小さくする
- ヒヤリ・ハットの報告は、責めるためではなく、ケアをよくするため
- 死亡事故や、医師の診断で治療が必要になった事故は、5日以内に市町村へ報告する
- 「よく見守る」ではなく、なぜなぜ分析で根本の原因を探る
※本記事は2026年10月時点の情報をもとにしています。

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