デイサービス倒産が過去最多。介護を受けられない時代に、元気な今からできる備え

介護の知識

2026年1〜9月、デイサービスの倒産が47件にのぼり、同じ期間としては過去最多になりました(東京商工リサーチ調べ)。介護業界全体でも、倒産は136件で過去最多に並んでいます。

高齢者は増えているのに、介護の事業所が潰れていく。このニュースを見て、「自分にはまだ関係ない」と思った人も多いかもしれません。

今、介護を受けている人は、通っている事業所が閉鎖しても、ケアマネジャーが次の事業所を探して、なんとかつないでいくことができます。本当に心配なのは、その先です。介護の担い手そのものが減っていく中で、まだ介護を必要としていない私たちが、いざ介護が必要になったとき、どうなるのか。

この記事では、介護の現場で働く立場から、今起きていることと、元気な今からできる備えをまとめます。デイサービスが潰れていく経営面の理由は、「高齢者は増えるのに、なぜデイサービスの倒産が過去最多なのか」に詳しく書きました。

介護保険があっても、介護を受けられない時代へ

倒産の背景にあるのは、人手不足です。介護の仕事をする人が、足りなくなっています。

項目内容
介護職員の数2023年に約212.6万人。介護保険が始まってから初めて減った
必要な介護職員の数2040年度には約272万人が必要。2022年度より約57万人多く必要になる(厚生労働省の推計)
2025年から2040年にかけて働く世代の人口は15.0%減り、85歳以上の人口は42.2%増える
訪問介護の事業所1か所もない町村が116、残り1か所の市町村が285ある(2026年6月末、新聞社の集計)

介護が必要な人は増えるのに、支える人は減っていく。国もこの状況を認めて、制度を変え始めています。2026年6月に成立した改正法では、人口が減っている地域で、人員の基準をゆるめた特例の介護サービスを提供できるようになりました(2027年4月から)。今までと同じ形の介護サービスを、全国どこでも続けることは難しくなっているのです。

介護保険料は、40歳から払い続けます。ですが、保険料を払っていても、サービスを提供する人や事業所がなければ、介護は受けられません。「介護保険があるから大丈夫」は、もう通用しなくなりつつあります。

なぜ、介護の担い手が足りないのか

理由の一つは、給料です。厚生労働省の資料(令和6年賃金構造基本統計調査)によると、ボーナスを含めた月あたりの給与は、全産業の平均が38.6万円なのに対し、介護職員は30.3万円です。月に8万円以上の差があります。

介護の仕事は、人の暮らしを支えるやりがいのある仕事です。ですが、給料がどうしても安く、ほかの仕事と比べたときに選ばれにくいのが現実です。最低賃金が上がり、ほかの業界も人を取り合う中で、この差は大きな壁になっています。

しかも、介護の報酬は国が決める価格で、事業所が自由に値上げすることはできません。物価や人件費が上がっても、それを利用料に上乗せできないのです。働く世代が減っていくことも重なり、介護の担い手を急に増やすのは、簡単なことではありません。

だからこそ、自分の老後の介護を、「いざとなれば誰かがやってくれる」という前提で考えるのは危険です。介護が必要になる時期を遅らせ、必要になったときの選択肢を、自分で広げておく。それが、これからの備えだと考えています。

元気な今からできる、5つの備え

1.自分の体を、データで知る

一番すすめたいのが、これです。腕時計型やバンド型の、体の状態を記録する機器(ウェアラブル端末)を使って、自分の体調を自分で把握することです。

私も、ウェアラブル端末を使っています。以前は腕時計型のものを使っていて、今はより軽いバンド型のものに乗り換えました。乗り換えた理由や使い勝手は、「Apple WatchからFitbit Airに乗り換えてみた」にまとめています。普段見ているのは、次のようなデータです。

  • 心拍数:運動するとき、心拍数を見ながら、体に合った強さかどうかを確かめる
  • 歩数と消費カロリー:1日にどれだけ動いたかを確かめる
  • 睡眠時間と睡眠のスコア:どれだけ眠れたか、眠りの質はどうだったかを確かめる

医師には、データを持って相談する

データを取ることの一番の価値は、医師に相談するときに、はっきりとした材料を持っていけることだと思います。

「なんとなく眠れない」「最近、調子が悪い」。こう伝えるだけでは、医師も判断が難しく、とりあえず薬を出す、ということになりがちです。ですが、「この2週間、睡眠は平均5時間で、夜中に何度も目が覚めている」「歩数がこの1か月で半分に減った」と伝えられれば、原因を一緒に考えやすくなります。

なんとなく調子が悪くて薬を処方される時代からは、抜け出さなければいけないと思っています。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」でも、飲む薬が6種類以上になると、副作用などの問題が起きやすくなることが示されています。年を取るほど薬は増えがちです。だからこそ、元気なうちから、データで自分の体と向き合う習慣をつけておくことが大切です。

国も、自分の健康データを持つ方向へ

国も、自分の健康の情報を自分で持つ方向に進んでいます。マイナポータルでは、自分の健診の結果や、処方された薬の情報を見ることができます。

使うときの注意

ウェアラブル端末の数値は、病気の診断ではありません。一つひとつの数値に一喜一憂する必要はありません。

いつもと違う状態が続くときに、医師に相談するための材料として使います。

2.介護が必要になる時期を、遅らせる

介護の担い手が減っていく中で、一番確実な備えは、介護が必要になる時期を、できるだけ遅らせることです。

  • 運動:国の運動のガイドでは、成人は1日8,000歩以上、高齢者は1日6,000歩以上が目安です
  • 睡眠:国の睡眠のガイドでは、成人は6時間以上の睡眠が目安です
  • 楽しむこと:趣味や人とのつながりを持ち、毎日を楽しむこと

最後の「楽しむ」は、意外と大事です。介護予防というと、運動や食事など、やらなければならないことばかりが並びます。ですが、楽しみや役割がなくなると、人は動かなくなり、体も心も弱っていきます。好きなことがあるから外に出る、会いたい人がいるから歩く。楽しむことは、それ自体が介護予防です。

もちろん、予防をすれば一生介護がいらない、ということはありません。年を取れば、誰でもいつかは支えが必要になります。それでも、その時期を数年遅らせることには、大きな意味があります。歩くことの効果は「ウォーキングの効果まとめ」、続けるコツは「継続するだけで、人より優れている」に書いています。

3.ライフプランを立て、お金を育てる

介護が必要になったとき、お金に余裕があれば、選べるものが増えます。介護保険の外の自費のサービスを使う、条件の合う施設を選ぶ、といったことです。

私自身も、自分の老後に向けてライフプランを立て、NISAを使ってお金を育てています。今のお金の状態を知り、どうなりたいかを決めて、そこに向けて貯める・稼ぐ・増やす。その考え方は「金利を味方にするか、敵にするか」にまとめました。

ただし、お金だけで全部が解決するわけではありません。自費のサービスも、働く人がいなければ成り立たないからです。お金は、体の備えと組み合わせてこそ生きてきます。

4.住む場所を考える

介護サービスがなくなっていくのは、まず人口が減っている地域からです。訪問介護の事業所が1か所もない町村が、すでに100を超えています。

老後をどこで暮らすかを考えるとき、家の広さや景色だけでなく、病院や介護の事業所が近くにあるかも、大事な基準になります。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」を使えば、住んでいる地域や、住みたい地域にどんな事業所があるかを調べることができます。

5.機械やAIの手を借りる介護を、受け入れる

人の手が足りなくなる以上、これからの介護は、機械やAIの力を借りるのが当たり前になっていきます。夜間の見守りをセンサーで行う、記録をAIで作る、といった形です。2026年10月の所信表明演説でも、首相が医療や介護でのAIの活用を大胆に進めると述べました。

「人の手でしてもらうのが本当の介護だ」と考える人もいるかもしれません。ですが、機械に任せられることを任せるからこそ、人にしかできない関わりに、人の時間を残せます。自分が介護を受ける側になったとき、そうした介護を受け入れられるかどうかも、これからの備えの一つです。ウェアラブル端末に慣れておくことは、その第一歩にもなります。

私がこれから、したいこと

介護の仕事をしていると、介護が必要になってからの支えだけでは、もう追いつかないと感じます。担い手が減る以上、介護が必要になる前に、一人ひとりが自分の体と向き合うことが、これまで以上に大切になります。

私自身、これから介護予防や予防医療に関わる活動をしていきたいと考えています。このブログでも、元気なうちからできることを、介護の現場の目線で伝えていきます。

まとめ

元気な今からできる、5つの備え

1.ウェアラブル端末で、自分の体をデータで知る。医師にはデータを持って相談する。

2.運動・睡眠・楽しむことで、介護が必要になる時期を遅らせる。

3.ライフプランを立て、お金を育てて、選択肢を広げる。

4.病院や介護の事業所が近くにあるかも考えて、住む場所を選ぶ。

5.機械やAIの手を借りる介護を、受け入れる準備をしておく。

介護の担い手が減っていく流れは、すぐには止まりません。ですが、自分の体と暮らしに向き合う準備は、今日から始められます。まずは、今日の歩数と、昨夜の睡眠時間を確かめるところから始めてみてください。

※本記事は2026年10月時点の情報をもとにしています。倒産件数は東京商工リサーチ、介護職員数・必要数・賃金は厚生労働省の公表資料、訪問介護事業所がない町村の数は新聞社の集計によります。

参考資料

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