金利を味方にするか、敵にするか|漠然とした老後の不安を小さくする方法

お金・投資

老後のお金が足りるのか、不安に思ったことはありませんか。

私が投資を始めたきっかけも、その不安でした。お金のこと、老後のこと。何がどれだけ必要なのか分からないまま、なんとなく不安だけが大きくなっていく。そんな状態から抜け出したかったのです。

株式投資を始めると、世の中のことが少しずつ分かってきました。そして、「複利」の仕組みを知ったことで、漠然とした不安は、ずいぶん小さくなりました。

このシリーズでは、成長が複利で積み上がる考え方を書いてきました。最終回のこの記事では、お金の複利の話をします。金利は、味方にすればお金を育ててくれますが、敵に回すと、追いかけてくる力になります。

金利は、味方にも敵にもなる

複利とは、増えた分にもまた利息がついて、雪だるまのように増えていく仕組みです。この仕組みは、お金を増やすときにも、借りるときにも、同じように働きます。

  • 味方にする:貯めたお金や投資したお金が利益を生み、その利益がまた利益を生む
  • 敵にする:借りたお金に利息がつき、返していない分に、また利息がつく

複利の力を手軽に知る方法に、「72の法則」があります。72を年の金利で割ると、お金がおよそ2倍になるまでの年数が分かる、というものです。

年の金利2倍になるまで
3%約24年
5%約14年
15%約5年
18%約4年

お金を貸すときの金利の上限は、法律(利息制限法)で、借りる額に応じて年15〜20%と決められています。カードローンやリボ払いには、この上限に近い金利のものも少なくありません。返さずにいれば、借金は5年もたたずに2倍に膨らむ計算です。

同じ複利でも、向きが変わるだけで、お金を育てる力にも、お金を奪っていく力にもなるのです。

金利を敵にしない:ローンは、できる限り組まない

私の考えは、少し厳しいかもしれません。ローンは、できる限り組まないほうがいいと思っています。

リボ払いやカードローンは、言うまでもありません。ほかのどんな投資よりも先に、返すことを考えるべきです。年15%の借金を返すことは、年15%で確実に増える投資と同じ意味を持ちます。そんな投資は、ほかにありません。

車や家についても、あえて厳しい言い方をすると、ローンを組まなければ買えない車や家は、今の収入には見合っていないのだと思います。

大きなローンを抱えることが、働くモチベーションになるという考え方もあります。ですが、借りるお金が大きいほど、身動きが取れなくなります。転職したい、働き方を変えたい、親の介護で仕事を減らしたい。そう思ったときに、毎月の返済が足かせになります。

一方で、住まいは暮らしの土台で、ローンを組まずに家を買うのが難しいことも確かです。どうしても借りるなら、私は次の2つを考えておきたいと思います。

  • 収入が減っても払えるか:今の収入ではなく、病気や介護、転職で収入が減ったときにも払える額かどうかで考える
  • 金利が上がっても払えるか:日本でも金利が上がり始めています。変動金利で借りると、返済額が増えることがある

そして何より、1本目の記事「『足るを知る』は、あきらめることじゃない」で書いたように、その車や家は、他人の物差しではなく、自分の物差しで本当に必要かを考えることです。

金利を味方にする:投資は、世の中を知る窓

金利を味方にする方法が、投資です。

投資を始めてよかったと思うのは、お金が増えたことだけではありません。自分のお金が世の中とつながったことで、ニュースや経済の動きに関心が向くようになりました。世の中の見え方が変わったことは、「投資で得たのは、お金だけじゃなかった」にも書いています。

今は、国の制度として「NISA(少額投資非課税制度)」があります。投資で得た利益に、本来なら約20%かかる税金がかかりません。

  • つみたて投資枠:年120万円まで
  • 成長投資枠:年240万円まで
  • 生涯の上限:合わせて1,800万円まで。非課税の期間に期限はない

複利は、時間をかけるほど大きく効きます。たとえば、毎月3万円を20年間積み立てると、元本は720万円です。これが年3%で運用できたとすると、20年後には約985万円になる計算です。増えた約265万円は、運用によって生まれたお金です。しかも、増えた分にもまた利益がつくため、続ける年数が長くなるほど、増え方は大きくなっていきます。

ただし、投資は元本が保証されたものではありません。値下がりする年もあります。だからこそ、生活に必要なお金は残したうえで、無理のない額を、長く続けることが大切です。始め方は「お金持ちで、投資をしていない人はいません」、毎月の金額の考え方は「投資はいくらから?収入の何%?」で詳しく書いています。

漠然とした不安の正体は、「分からない」こと

介護の仕事をしていると、お金の面で困っている方に出会います。老後のお金が足りなくなってしまった人。そして、それ以上に多いと感じるのが、いくらかかるか分からないまま、漠然とした不安を抱えている人です。

2019年、金融庁の審議会の報告書をきっかけに、「老後に2,000万円足りない」という話が大きな話題になりました。ですがこれは、ある条件の平均的な世帯をもとにした計算です。必要な額は、年金の額も、暮らし方も、持ち家かどうかも、人によってまったく違います。2,000万円は、あなたの数字ではありません。

不安の正体は、多くの場合、「分からない」ことです。自分の数字が分かれば、不安は「やるべきこと」に変わります。そのための道具が、ライフプランです。

ライフプランは、3つのステップで立てる

自分の現在地が分からなければ、どこへ向かえばいいのか分からず、迷子になります。ライフプランは、次の3つの順番で考えます。

1.現在地を知る

まず、今の自分のお金の状態を把握します。毎月の収入と支出、貯金、投資しているお金、そして借りているお金です。

老後の大きな柱になる年金は、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で、将来の見込み額を簡単に試算できます。IDやパスワードは不要で、毎年届く「ねんきん定期便」の二次元コードをスマホで読み取れば、自分の加入記録が反映されます。より詳しく知りたいときは、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。

2.どうなりたいかを思い描く

次に、自分がどうなりたいかを思い描きます。何歳まで働きたいか。どこで、誰と暮らしたいか。元気なうちに、何をしておきたいか。

旅行のように、体が元気なうちにしかできないこともあります。そのことは「旅行に行ける時間は、思っているより短い」に書きました。介護が必要になったときのお金も、考えておきたいことの一つです。目安は「介護費用、実際いくらかかるの?」にまとめています。

3.そこへ向かう行動をとる

現在地と行き先が分かれば、足りないものが見えてきます。お金が必要なら、とる行動は3つです。

  • 貯める:給料が入ったら、先に決めた額を別の口座へ移す
  • 稼ぐ:本業の力を高める。資格を取る、評価される職場を選ぶ
  • 増やす:NISAなどで、時間を味方にして育てる

ここに、私は一つ足したいと思います。減らさないことです。高い金利の借金をしない、不要な物を買わない。金利を敵に回さないことも、立派な行動です。

この3つのステップは、2本目の記事「良い目標は、今日の行動を変える」で書いた目標の立て方と同じ形をしています。どうなりたいかを決め、今日の行動に落とし込み、定期的に見直していくのです。

成長の複利と、お金の複利は、同じ形をしている

このシリーズを通して書いてきたのは、結局、一つのことです。

お金も、スキルも、経験も、コツコツ続けることが最大のポイントだということです。どれも、毎日の差はわずかです。ですが、続けた時間が長くなるほど、増えた分がまた増えて、差は大きく開いていきます。早く始めて、長く続けて、途中でやめない。成長の複利も、お金の複利も、勝ち方は同じです。

  • 足るを知る:他人の物差しではなく、自分の物差しを持つ
  • 目標の立て方:今日の行動を変える目標を立て、バージョンアップし続ける
  • すぐやる:不安が消えるのを待たずに、小さな締め切りで動き出す
  • 継続:小さく続け、休んでも戻ってくる
  • 凡人の戦い方:戦う場所を選び、毎日を積み上げ、土台を守る
  • 金利を味方にする:借金で金利を敵に回さず、時間をかけてお金を育てる

不安が完全に消えることはありません。ですが、自分の数字を知り、小さく続けることで、不安は確実に小さくできます。

明日、一つだけやってみてほしいこと

ねんきん定期便を探して、年金の見込み額を見てみる

引き出しの奥にしまってある「ねんきん定期便」を出して、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で二次元コードを読み取ってみてください。

自分が将来受け取れる年金の額が分かるだけで、「いくら足りないのか」が、ぼんやりした不安から、具体的な数字に変わります。それが、ライフプランの最初の一歩です。

シリーズ最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

※本記事は2026年10月時点の制度をもとにした一般的な情報です。特定の金融商品をすすめるものではありません。投資は元本が保証されたものではないため、ご自身の判断で行ってください。

参考資料

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