家族が亡くなったあと、申請しないともらえないお金

介護の知識

看取りのあと、ご家族は何から手をつければいいのか分からなくなります。気持ちの整理がつかないうちに、期限のある手続きが次々にやってくるからです。

しかも、介護のお金と同じでほとんどが申請主義です。黙っていて振り込まれるものはありません。

今回は、家族が亡くなったあとの手続きを期限の早い順に並べました。★の数はお金への効き目です。

先に、期限があるものだけ

落ち着いて読む余裕がないときは、ここだけ見てください。

  • 死亡届——死亡を知った日から7日以内
  • 年金の受給停止——厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内
  • 世帯主変更届——14日以内
  • 相続放棄をするなら——3か月以内
  • 準確定申告——4か月以内
  • 相続税の申告——10か月以内

このうち相続放棄の3か月だけは、性質が違います。借金が多い場合に手続きを逃すと、そのまま引き継ぐことになります。故人に借入がありそうなら、早めに専門家へ相談してください。

【14日以内】役所でまとめて済ませる ★★

死亡届を出すと火葬許可証が交付され、葬儀に進みます。その後、市区町村で必要な手続きがいくつかあります。

  • 年金の受給停止——止めないと払われ続け、あとで返還を求められます
  • 世帯主変更届——世帯主が亡くなり、残る世帯員が2人以上いる場合
  • 健康保険証・介護保険被保険者証の返却
  • 介護保険の資格喪失手続き

これらは同じ窓口の並びでまとめて済むことが多いので、一度で終わらせてしまうのが楽です。何が必要かは、電話で先に聞いておくと二度手間になりません。

申請すればもらえる、埋葬料・葬祭費 ★★

葬儀にかかった費用に対して、健康保険から給付があります。加入していた保険によって名前が違います。

  • 健康保険(会社員など)——埋葬料5万円。ご家族が亡くなった場合の「家族埋葬料」も同額です
  • 国民健康保険・後期高齢者医療——葬祭費。自治体によって異なり、多くは3万円〜7万円です

金額としては大きくありませんが、申請すれば確実に受け取れるお金です。時効は2年。葬儀の領収書が必要になるので、捨てないでください。

忘れられがちな、未支給年金 ★★

ここは本当に見落とされます。

年金は後払いです。2か月分をまとめて後から受け取る仕組みなので、亡くなった時点でまだ受け取っていない分が必ず残ります。これを未支給年金といいます。

亡くなった月の分まで受け取る権利があり、生計を同じくしていたご遺族が請求できます。年金を止める手続きと一緒に案内されることが多いのですが、これも請求しなければ支払われません。

あとから戻ってくる、高額療養費 ★★★

金額として大きくなりやすいのが、ここです。

亡くなる前の数か月は、医療費が高額になりがちです。入院、手術、検査が続き、自己負担が上限を超えていることは珍しくありません。

高額療養費は、ご本人が亡くなったあとでも相続人が請求できます。

時効は2年です。介護保険の高額介護サービス費も同じように請求できます。医療と介護の両方を使っていた方なら、両方を確認してください。

亡くなったあとは、通帳を見る機会も増えます。入院費や介護費が大きく出ている月がないか、そこだけでも確認する価値があります。制度の詳しい仕組みは高額療養費の記事にまとめました。

遺族年金でいくら受け取れるのか ★★★

遺族年金には2種類あります。

① 遺族基礎年金——18歳の年度末までの子がいる配偶者、または子が対象です。2026年度の金額は次のとおりです。

  • 基本額:年847,300円
  • 子の加算:第1子・第2子はそれぞれ年243,800円
  • 配偶者と子2人なら、合計で年約133万円

② 遺族厚生年金——会社員・公務員として厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に、上乗せされます。金額は報酬比例部分のおよそ4分の3です。

なお、自営業などで国民年金だけだった場合、子がいなければ遺族基礎年金は受け取れません。そのかわり、次の2つがあります。

  • 死亡一時金——第1号被保険者として3年以上保険料を納めた方が、老齢基礎年金も障害基礎年金も受けずに亡くなった場合。納付期間に応じて12万円〜32万円(付加保険料を36か月以上納めていれば8,500円加算)
  • 寡婦年金——婚姻期間10年以上で、夫が第1号として10年以上納付し、年金を受けずに亡くなった場合。妻が60歳から65歳になるまでの間、夫の老齢基礎年金の4分の3を受け取れます

両方に該当する場合は、どちらか一方を選ぶことになります。どちらが有利かは年齢や納付期間で変わるので、年金事務所で試算してもらってください。

仕事が原因で亡くなった場合は、労災 ★★★

ここは金額が大きく変わるので、見落とさないでください。仕事中や通勤中の事故・病気が原因で亡くなった場合は、労災保険から給付があります。

  • 遺族補償年金——遺族の人数に応じて、給付基礎日額の153日分(遺族1人)から245日分(4人以上)が毎年支給されます
  • 遺族特別支給金——一時金として定額300万円
  • 葬祭料——315,000円+給付基礎日額の30日分(この額が給付基礎日額60日分に満たない場合は60日分)

年金を受け取る資格のある遺族がいない場合は、遺族補償一時金として給付基礎日額の1,000日分が支給されます。

健康保険の埋葬料が5万円であるのに対し、労災の葬祭料は最低でも30万円を超えます。桁が違うということです。

注意したいのは、労災かどうかは会社が決めるものではないという点です。過労が原因の病気や、通勤途中の事故なども対象になりえます。思い当たることがあれば、労働基準監督署に相談してください。手続きの窓口も、年金事務所ではなく労基署になります。

2028年4月から、遺族厚生年金が変わります

これから備える方には、こちらも知っておいてほしい話です。

2028年4月から、遺族厚生年金の仕組みが大きく変わります。これまで男女で違っていた受給の条件が統一され、次のようになります。

  • 子のない配偶者が60歳未満で配偶者を亡くした場合、男女とも原則5年の有期給付になります
  • そのかわり有期給付加算が上乗せされ、給付中の額は現在のおよそ1.3倍になります
  • 60歳以上で亡くした場合は、これまでどおり無期給付です
  • 障害の状態にある方や、就労収入が少ない方は継続給付を受けられます
  • 受給できる遺族の年収850万円未満という要件は撤廃されます

影響が大きいのは、子のいない50代以下の配偶者です。「配偶者が亡くなれば遺族厚生年金が一生続く」という前提は、この世代では成り立たなくなります。共働きを続ける、自分名義の資産を作っておく——備え方そのものを見直す必要が出てきます。

【4か月以内】準確定申告 ★★

亡くなった方に収入があった場合、その年の1月1日から亡くなった日までの所得を、相続人が申告します。これを準確定申告といい、期限は4か月以内です。

面倒に感じるかもしれませんが、還付になることが多い手続きです。年金や給与からは所得税が引かれている一方、亡くなるまでの医療費は医療費控除として申告できます。最期の数か月に医療費がかさんでいれば、その分が戻ります。

現場から、ひとつだけ

ここまで並べてきましたが、看取りの直後に、これを全部こなせる方はまずいません。それが普通です。

だからこそ、期限のあるものだけ先に片づけて、あとは落ち着いてからで構いません。埋葬料も未支給年金も高額療養費も、時効は2年あります。慌てて全部やろうとしなくて大丈夫です。

そのうえで、お伝えしたいことがあります。元気なうちに、通帳・保険証券・年金手帳がどこにあるかを共有しておいてください。

ご家族が困るのは、手続きの複雑さそのものより、「何がどこにあるか分からない」という一点です。加入している保険が分からない、口座がいくつあるか分からない。そこで止まってしまうご家庭を、現場ではよく見ます。一覧を1枚作っておくだけで、残される人の負担はまるで変わります。

まとめ

  • 期限があるのは死亡届7日/年金停止10〜14日/世帯主変更14日/相続放棄3か月/準確定申告4か月/相続税10か月
  • 埋葬料5万円(健康保険)、葬祭費3〜7万円(国保・後期高齢者)。申請しないともらえない
  • 未支給年金——年金は後払いなので、亡くなった月の分まで必ず残っている
  • 高額療養費・高額介護サービス費は、死亡後も相続人が請求できる。時効2年
  • 遺族基礎年金は年847,300円+子の加算(第1子・第2子は各243,800円)。遺族厚生年金は報酬比例の約4分の3
  • 2028年4月から、子のない60歳未満の配偶者は原則5年の有期給付に。そのかわり額は約1.3倍
  • 国民年金だけなら死亡一時金(12万〜32万円)寡婦年金(60〜65歳、夫の老齢基礎年金の4分の3)。どちらか一方を選ぶ
  • 仕事や通勤が原因なら労災。遺族補償年金+遺族特別支給金300万円、葬祭料は315,000円+給付基礎日額30日分と桁が違う
  • 準確定申告は還付になることが多い。医療費控除も使える
  • 時効は2年ある。慌てず、期限のあるものから

手続きの話は、どうしても事務的になります。ですが、これらは残された方の生活を支えるためのお金です。受け取れるものを受け取るのは、後ろめたいことではありません。

分からないことがあれば、市区町村の窓口でも、年金事務所でも、担当だったケアマネジャーでも構いません。聞いていい相手は、思っているより多くいます。

※本記事は2026年8月時点の情報に基づく個人の考えであり、制度の内容や金額は改定される場合があります。葬祭費の額や手続きは自治体によって異なります。年金は年金事務所、健康保険は加入先、税金は税務署、相続は司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

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