うちの事業所では、職員面談は年2回。会社の上層部が実施します。ただ正直なところ、それがどんな効果を生んでいるのか、私にはよく見えていません。
日常的に職員と話はします。でも、キャリアの話は、ほとんどしていません。「どうなりたいのか」を聞いたことがない。——これは反省を込めて書いています。今回は、前回まとめたGROWモデルを、職員との面談でどう使えるかを考えてみます。
聞かない理由を、年齢のせいにしていないか
私の事業所は年齢層が高めです。だから、どこかでこう思っていました。「今さら何かしたい、という感じでもないだろう」と。
でも、よく考えると——聞いたことがないのに、なぜそう判断できるのでしょうか。
意欲がないのではなく、誰にも聞かれたことがないだけかもしれません。「あなたはこの先どうなりたいですか」と真剣に問われた経験が、これまで一度もなかった。だとしたら、答えが返ってこないのは当然です。
そして、聞かなかった本当の理由は、たぶんこれです。聞き方が分からなかった。
だから「型」がいる
聞き方が分からないなら、型を借りればいい。それがGROWモデルです。
- G:Goal(目標)——どうなりたいのか
- R:Reality(現状)——今はどうなっているのか
- O:Options(選択肢)——どんな方法があるのか
- W:Will(行動)——実際に何をするのか
この順番に沿って質問するだけで、対話が形になります。詳しい解説は基礎編の記事にまとめました。
介護現場での聞き方
G:どうなりたいかを引き出す
いきなり「目標は?」と聞くと、「特にありません」で終わります。だから、切り口を変えます。
- この1年で、できるようになったことは何かありますか
- 仕事をしていて、やりがいを感じるのはどんな場面ですか
- 逆に、もっとこうしたいと思う場面はありますか
- 3年後、どんな働き方をしていたいですか
- 今より少しラクに働けるとしたら、何が変わればいいですか
「目標」という言葉を使わずに、その人の中にあるものを引き出すのがコツだと思います。
R:現状を、責めずに確認する
たとえば「記録が終わらない」という話が出たとき。「なぜ終わらないの?」は禁句です。
- 今、記録はどのタイミングで書いていますか
- うまく進む日と、そうでない日の違いは何ですか
- 何が邪魔になっていると思いますか
- 自分で変えられそうなことはありますか
O:選択肢を一緒に広げる
ここで大事なのは、こちらが答えを言わないこと。「じゃあこうしなさい」と言った瞬間、それは相手の目標ではなくなります。
- どんな方法が考えられますか
- 他にはありますか
- 小さく始めるなら、何ができそうですか
- 誰かに手伝ってもらうとしたら、誰ですか
W:行動まで具体化する
「頑張ります」で終わらせない。いつ・何を・どのくらいまで決めます。
- まず何から始めますか
- いつから始めますか
- 実行できそうな度合いは、10点満点で何点ですか
- (点数が低ければ)何があれば点数が上がりますか
- 次はいつ、振り返りましょうか
引き出すだけでは足りない——「会社が求めること」は伝える
ここが、私がもうひとつ反省している点です。
GROWモデルは本人から引き出す手法ですが、それだけでは片手落ちです。職員の側からすれば、会社が何を求めているのかを知らないまま「どうなりたいか」と聞かれても困るでしょう。
求める人材像は、こちらから言葉にして伝えるべきです。これはコーチングではなくティーチングの領域。両方が必要なのです。
私が事業所で求めたい人材を言葉にすると、こうなります。
- 自己の振り返りができる人——うまくいったこと、いかなかったことを自分で見つめられる
- 能力を高めようとする人——現状維持ではなく、伸びようとする
- できることを増やそうとする人——役割の幅を広げていける
- 有利な資格を取る人——介護福祉士、ケアマネなど、自分と事業所の両方を守る資格
これを伝えないまま「主体性を持って」と言っても、方向が定まりません。ゴールを示さずに走れとは言えないのです。
職員のみなさんへ——自分の価値を上げるという視点
ここからは、面談を受ける側に向けて書きます。
面談は、評価されるための儀式ではありません。自分の働き方とこれからを考える、貴重な機会です。ぜひ、次の3つを考えてみてください。
- 自分が会社に貢献できることは何か——利用者への関わり、後輩の指導、業務改善。何でも構いません。
- 自分の価値を上げるには何が必要か——資格、経験、任せてもらえる役割。
- そのために、今日から何を始めるか——小さな一歩でいい。
厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、介護報酬は公費が原資で、事業所が自由に価格を上げられる世界ではありません。その中で給料を上げるには、加算につながる資格や役割を得ること、そして利用者に選ばれる事業所をつくること——この2つが現実的な道です。
自分の価値を高めることは、会社のためだけではありません。自分と家族の生活を守ることそのものです。
面談用ワークシートを配布します
「聞き方が分からない」——この壁を越えるために、GROWモデルに沿った面談用ワークシートを作りました。
職員に事前に記入してもらい、面談で一緒に深めていく形を想定しています。事業所名や項目は自由に書き換えてお使いください。Word形式なので編集できます。
人と向き合う仕事は、想像以上に体力を使います。私は日々のたんぱく質補給に、手軽なプロテインを取り入れています。
まとめ
- 面談が形だけになっていないか。年2回の儀式で終わっていないか——まず自分に問い直す。
- 「今さら」と決めつけているのは、聞く側かもしれない。意欲がないのではなく、聞かれたことがないだけ。
- 聞き方が分からないなら、GROWという型を借りればいい。
- 目標という言葉を使わず、「できるようになったこと」「やりがいを感じる場面」から入る。
- 引き出すだけでは足りない。会社が求める人材像は、こちらから伝える。
- 職員側も「会社に貢献できること」「自分の価値を上げるには何が必要か」を考えてみる。
私自身、まだできていないことばかりです。それでも、次の面談では「あなたはどうなりたいですか」と聞いてみようと思います。あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

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