「個人情報漏えいのお知らせ」というメールが届いた。いつも使っている通販サイトや会員サービスから、個人情報が流出したというニュースを見た。
こうしたとき、「もう手遅れなのでは」「何をすればいいのか分からない」と不安になる方は多いと思います。
結論から言うと、漏れた情報を取り戻すことはできませんが、被害につながらないようにすることはできます。大切なのは、何が漏れたのかを確かめ、その情報が悪用されないように手を打つことです。
この記事では、個人情報が漏れたときに今日やることを順番に整理し、そのうえで、これから漏れても困らない状態の作り方をまとめます。
まず、何が漏れたのかを確かめる
漏れた情報によって、起きうることと、やるべきことが違います。漏えいの通知やニュースで、どの情報が流出したのかを確認してください。
| 漏れた情報 | 起きうること | やること |
|---|---|---|
| 氏名・住所・電話番号・メールアドレス | 詐欺のメール・SMS・電話が増える | リンクを押さない。お金の話の電話は一度切る |
| メールアドレスとパスワード | 同じパスワードを使っている他のサービスに、不正にログインされる | そのサービスと、同じパスワードを使っていたサービスのパスワードをすべて変える |
| クレジットカード番号 | カードを不正に使われる | 明細を確認し、カード会社に連絡して再発行を相談する |
| 銀行・証券のログイン情報 | 不正な送金や、株の勝手な売買 | すぐに金融機関に連絡し、パスワードを変え、認証を強くする |
| 生年月日など | 「秘密の質問」や本人確認に使われる | 秘密の質問の答えを、推測されないものに変える |
氏名や住所、電話番号は、一度流出すると取り戻すことはできません。ですが、それだけでアカウントやお金に手を出されるわけではありません。「名前や住所を知られていても、アカウントやお金にはアクセスできない」状態を守ることが目標です。
今日やること
漏えいが分かったら、次の順番で進めます。
- 漏えいした会社の公式サイトで、内容を確認する。届いたメールのリンクからではなく、自分で検索した公式サイトや公式アプリから確認します
- そのサービスのパスワードを変える。
- 同じパスワードを使っていたサービスも、すべて変える。ここがいちばん大切です
- 2段階認証やパスキーを設定する。メール、Apple、Google、銀行、証券を優先します
- カード・銀行・証券の明細と、ログインの履歴を確認する。身に覚えのないものがないかを見ます
- メールの設定を確認する。知らない端末がログインしていないか、知らない転送先が設定されていないかを見ます
3つ目が特に重要なのは、「パスワードリスト攻撃」があるからです。どこかで漏れたメールアドレスとパスワードの組み合わせを、Google、Amazon、Apple、銀行、証券会社、SNSなどで次々に試す手口です。同じパスワードを使い回していると、漏れたサービスとは関係のないアカウントまで乗っ取られてしまいます。
どこで同じパスワードを使っていたか思い出せない場合は、Appleの「パスワード」アプリやGoogleパスワードマネージャーのセキュリティの確認機能が役立ちます。流出したパスワードや、使い回しているパスワードを一覧で教えてくれます。
メールアカウントは最優先で守る
多くのサービスでは、「パスワードを忘れた方はこちら」からメールを使ってパスワードを再設定できます。つまり、メールを乗っ取られると、他のサービスまで連鎖的に乗っ取られる可能性があります。
メールは「ただの連絡手段」ではなく、インターネット上の本人確認手段の一つです。漏えいが分かったときは、まずメールのパスワードと2段階認証を確認してください。
これから増える詐欺に備える
個人情報が漏れたあとに増えるのが、その情報を使った詐欺です。宅配業者、銀行、クレジットカード会社、Amazon、Apple、Googleなどを装ったSMSやメールが届きます。しかも、氏名や住所を知っているため、本物に見えてしまいます。
ここで重要なのは、自分の個人情報を知っているからといって、本物とは限らないということです。
- メールやSMSのリンクからログインしない。公式アプリやブックマークから入る
- 「漏えいのお詫び」「補償の手続き」を装った連絡に注意する。流出のニュースの直後に届くことがあります。連絡に書かれたリンクや電話番号は使わず、公式サイトで本当に案内が出ているかを確かめます
- 警察、役所、年金事務所、銀行を名乗って、お金や暗証番号の話をしてくる電話は、一度切り、自分で調べた番号にかけ直す
被害にあってしまったら
不正な利用や送金に気づいたら、すぐに次の窓口に連絡します。早いほど、被害を止められる可能性が高まります。
- クレジットカードの不正利用:カード会社(カードの裏面の電話番号)
- 銀行・証券口座の不正な取引:その金融機関
- 詐欺の被害や、どこに相談すればよいか分からないとき:警察の相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」
カードの不正利用は、カード会社の補償の対象になる場合があります。明細を確認し、身に覚えのない請求は早めに連絡しましょう。
次に漏れても困らない状態を作る
企業やサービス側から情報が流出することは、自分では防げません。だからこそ、次に漏れたときに被害にならない状態を作っておくことが大切です。
個人情報が知られていても
↓
メールには入れない
↓
パスワードも使い回していない
↓
2段階認証やパスキーもある
↓
銀行や証券にはアクセスできない
パスワードは覚えず、パスワードマネージャーに任せる
「サービスごとに違うパスワードなんて覚えられない」。当然です。そこで使うのがパスワードマネージャーです。英数字や記号を組み合わせた長いパスワード(例:7sK!2mQ#9Lp@4zT)をサービスごとに自動で作り、保存してくれます。人間が覚えるのではなく、仕組みに管理させるという考え方です。
| 向いている人 | 特徴 | |
|---|---|---|
| Appleの「パスワード」 | iPhone・Macが中心の人 | 無料。パスワード、パスキー、2段階認証のコード、セキュリティの警告をまとめて管理できる |
| Googleパスワードマネージャー | Androidやパソコンの Chrome が中心の人 | 無料。Chromeやスマホのアプリで自動入力でき、漏えいの確認もできる |
| 1Password | 家族で共有したい人、仕事用と個人用を分けたい人 | 有料。複数の保管庫、家族共有、カード情報や秘密のメモ、複数のOSに対応 |
一般の家庭であれば、AppleやGoogleから始めても十分でしょう。
2段階認証とパスキーを設定する
パスワードだけに頼らないことも重要です。2段階認証を設定すれば、パスワードが漏れても、本人のスマートフォンでの確認がなければログインされにくくなります。
パスワードを入力
↓
スマートフォンで本人確認
↓
ログイン
さらに増えているのが「パスキー」です。パスワードの代わりに、Face IDやTouch ID、スマホのロック解除でログインします。パスキーは本物のサイトでしか使えない仕組みのため、偽のサイトに誘導されても情報を盗まれにくいのが特長です。対応しているサービスでは、パスキーへの切り替えをおすすめします。
銀行・証券口座はさらに厳重に
2025年には、偽のサイトなどで盗まれた情報を使って証券口座に不正にログインし、持っている株を勝手に売買する被害が相次ぎました。金融庁の集計では、2025年1月から2026年9月までに、不正アクセスは約1万9千件、そのうち約1万件で実際に勝手な売買が行われ、売却された金額は約4,400億円にのぼります。
これを受けて、証券会社では、ログインや出金のときにパスキーなどの強い認証を必須にする動きが進んでいます。NISAなどで投資をしている人は、案内が来ていたら早めに設定を済ませておきましょう。あわせて、次の通知はできるだけオンにしておきます。
- ログイン、取引、出金の通知
- 登録メールアドレスや、出金先口座の変更の通知
- クレジットカードの利用通知
銀行の振込上限額も、必要以上に高く設定しない方が安全です。万が一のときに、被害の大きさを抑えられます。
スマートフォンとデータを守る
今のスマートフォンには、銀行、証券、カード、メール、写真、パスワードなど、非常に多くの情報が入っています。スマートフォンそのものが重要な「鍵」です。
- Face IDや指紋認証を設定し、パスコードを簡単なものにしない
- OSやアプリをできるだけ最新の状態にする
- アプリは公式のストアからだけ入れる
- iPhoneなら「探す」をオンにしておく
- 写真や書類は、複数の場所にバックアップしておく(例:写真はGoogleフォト、書類はGoogleドライブ、iPhone本体はMacへ暗号化バックアップ)
SNSでは情報を組み合わせすぎない
住んでいる地域、勤務先、年齢、誕生日、家族構成、旅行の予定。一つ一つは問題のない情報でも、組み合わせると個人を特定でき、詐欺の作り話の材料にもなります。特に「今旅行中です」とリアルタイムで投稿すると、「自宅にいない」ことまで公開することになります。
親世代を詐欺から守る
流出した個人情報は、高齢の方を狙った詐欺にも使われます。名前や住所、家族構成を知ったうえで電話をかけてくるため、本物の連絡だと信じてしまいやすいのです。家族で次のことを決めておくと、被害を防ぎやすくなります。
- 固定電話は、いつも留守番電話にしておく。迷惑電話を防ぐ機能のある電話機を使う
- お金や口座の話の電話が来たら、家族に確認するまで何もしないと決めておく
- 家族だけの「合言葉」を決めておく
- スマホを使っている親には、SMSのリンクを押さないこと、困ったら家族に画面を見せることを伝えておく
介護が必要になってからでは、こうした話し合いは難しくなりがちです。元気なうちに、帰省のついでなどに話しておくことをおすすめします。
仕事で扱う個人情報はさらに慎重に
介護、医療、福祉などでは、利用者の氏名、住所、病歴、服薬情報、家族関係、経済状況など、非常に慎重に扱うべき情報を扱います。個人のスマートフォンやクラウドへの保存は、勤務先のルールを確認してください。
生成AIを使う場合も同様です。氏名を「A氏」に変えただけでは、年齢や地域、病気、家族構成などの組み合わせから本人が推測できる場合があります。「その情報から本人を特定できないか」という視点が必要です。介護の仕事で生成AIを使うときの考え方は、こちらの記事で、事業所向けの利用ルールのひな形と一緒にまとめています。
まとめ
個人情報が漏れたと分かっても、慌てる必要はありません。漏れた情報は取り戻せなくても、悪用されないようにすることはできます。
- まず、何が漏れたのかを公式サイトで確かめる(届いたメールのリンクからは行かない)
- そのサービスと、同じパスワードを使っていたサービスのパスワードをすべて変える
- 2段階認証やパスキーを設定する。メールを最優先に
- カード・銀行・証券の明細とログイン履歴を確認し、通知をオンにする
- 「漏えいのお詫び」を装った詐欺や、お金の話の電話に注意する
- 被害にあったら、カード会社・金融機関、#9110、188に相談する
インターネットを怖がって使わないのではなく、便利なサービスを使いながら、守る仕組みも一緒に作っていく。それが、個人情報が漏れることを前提にした時代の情報管理です。
※本記事は2026年10月時点の情報をもとにしています。証券口座の被害件数・金額は、金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引の発生状況」(2025年1月〜2026年9月、発生日ベースの暫定値)によります。

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