親の介護費用を、あなたが背負い続ける必要はありません

介護の知識

親の介護にかかるお金を、あなたが出していませんか。あるいは、いつか出すことになると思っていませんか。

年金だけでは足りない分を、子どもが埋める。多くの家庭で、それは当たり前のように始まります。ですが、それがいつまで続くのかを考えたことはあるでしょうか。

介護のお金は、これからも増えていきます

65歳以上の方が払う介護保険料は、全国平均で月2,911円から始まりました。制度ができた2000年度のことです。それが2024年度からは月6,225円。倍以上になっています。厚生労働省は、2040年には月9,000円程度まで上がると見込んでいます。

2026年9月18日には、厚生労働省が2027年度からの見直し案を審議会に示しました。所得の高い人の保険料を引き上げ、住民税が非課税でなくなった人の負担は和らげる、という方向です。年内に結論が出る予定です。上がる人もいれば、下がる人もいます。ただ、介護全体にかかるお金が増え続けていることに変わりはありません。

施設の費用も同じです。2026年8月、東京都内の住宅型有料老人ホームが、利用料を月10万円から30万円へ値上げしたと報じられました。報酬改定で収入が減ったという特殊な事情もありましたが、厚生労働省には6月ごろから、ほかにも複数の有料老人ホームの値上げについて相談が寄せられているそうです。

物価も、働く人の給料も上がっています。3倍は極端な例だとしても、施設の料金がこれから上がっていくのは避けられないと思います。そして、その料金は入居する側が決められるものではありません。

子育てと介護のいちばんの違いは、終わりが見えないこと

子育てにもお金はかかります。でも、いつまでかかるかは、おおよそ見当がつきます。高校を出るまで、大学を出るまで。子どもは成長して、いつか自分の足で立ちます。

介護は、そうはいきません。終わりがいつ来るのか、誰にもわかりません。

生命保険文化センターの調査(2024年度)によると、介護をした期間の平均は4年7か月10年以上続いた人も14.8%いました。およそ7人に1人です。費用は月平均9.0万円、施設に入っている場合は13.8万円でした。

たとえば、親の年金だけでは毎月6万円足りないとしましょう。

  • 平均の4年7か月続けば:約330万円
  • 10年続けば:720万円

しかもその間に、保険料も施設の料金も上がっていくかもしれません。親の介護が始まる40代・50代は、子どもの教育費がかかる時期であり、自分の老後資金を作らなければいけない時期でもあります。そこに、終わりの見えない支出が重なります。

自分のお金が削られていくと、親が憎くなることもあります

大事な親です。だから払う。最初は、誰でもそう思えます。

ですが、それが何年も続き、自分の貯金が目に見えて減っていくと、気持ちは少しずつ変わっていきます。「いつまで続くのだろう」と考えるようになります。そしてやがて、そう考えてしまう自分を責めるようになります。

終わりを願ってしまう自分への罪悪感。これが、介護の苦しさの正体のひとつだと思います。

現場の肌感覚として、お金の負担が重くなるほど、ご家族の言葉や表情から余裕がなくなっていくように感じます。国の調査でも、家族による高齢者虐待の背景として、介護疲れや介護ストレスが繰り返し挙げられています。

親を憎みたい人はいません。憎んでしまうほど追い詰められる前に、知っておいてほしいことがあります。

子どもが親を養う義務は「余力の範囲」までです

民法では、親子はお互いに扶養する義務があると定められています。ただし、その重さは関係によって違います。

親が未成年の子どもを養う義務は、自分と同じ水準の生活をさせる義務です。自分の食事を削ってでも、子どもに食べさせなければいけません。

成人した子どもが親を養う義務は、それとは違います。自分の生活を普通に送ったうえで、余力がある範囲で助ける義務です。

つまり、自分や自分の家族の生活を削ってまで、親の介護費用を出し続ける義務はありません。

これは、親を見捨ててよいという意味ではありません。自分の生活が崩れてしまったら、親を支えることもできなくなるということです。

まずは、費用を軽くする制度を使い切ってください

生活保護を考える前に、確認してほしい制度があります。

  • 高額介護サービス費:1か月の自己負担に上限があり、超えた分が戻ってきます(高額介護サービス費は誰でも使える制度ではありません
  • 施設の食費・居住費の軽減:住民税が非課税の世帯で、預貯金が一定額以下の方が対象です。特養や老健、ショートステイの食費と居住費が安くなります
  • 特養への申し込み:原則として要介護3以上。有料老人ホームより費用を抑えられることが多いです
  • 税金の控除や手当:障害者控除、特別障害者手当など(高齢者の介護で使えるお金の制度4つ

親自身の預貯金や資産を先に使うことも前提になります。どの制度が使えるかは、担当のケアマネジャーに聞いてみてください。

それでも足りないなら、生活保護という選択肢があります

生活保護は、年金をもらっていても受けられます。国が決めた最低限の生活費に、年金などの収入が届かない場合、足りない分だけが支給されます。

厚生労働省の最新の調査(2026年6月分)では、生活保護を受けている世帯の55.3%が高齢者の世帯でした。半分以上です。特別な人のための制度ではありません。

介護はどうなるのか

  • 介護サービスの自己負担(1割)は「介護扶助」でまかなわれます。本人の負担は実質ありません
  • 介護保険料も、保護費に上乗せされる形で払えます
  • 特養やグループホームなど、施設にも入れます

知っておいてほしい注意点

  • 住まいの家賃は、「住宅扶助」として支給される上限の範囲内になります。今いる施設の家賃がそれを超えていると、転居が必要になることがあります
  • 特養は原則として要介護3以上です。相部屋になることが多いです
  • 親と同居している場合は、原則として世帯全体の収入で判断されます。別々に暮らしている場合や、施設に入っている場合とは扱いが変わります

子どもに連絡は来るのか

福祉事務所から、援助できるかどうかの問い合わせ(扶養照会)が来ることがあります。ですが、扶養は生活保護を受ける条件ではありません。「援助できない」と答えても、それで親が保護を受けられなくなるわけではありません。

また2021年に運用が見直され、10年程度音信不通の場合や、虐待・DVがあった場合などは、問い合わせをしないことになっています。

相談先は、お住まいの市区町村の福祉事務所です。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、そこにつないでもらえます。生活保護についてよくある誤解は、こちらにまとめています。
収入が減ったら、貯金を使い切る前に相談してください

生活保護は、親を見捨てることではありません

生活保護を使うことに、抵抗を感じる方は多いと思います。親に申し訳ない。世間体が悪い。自分が薄情に思える。

ですが、考えてみてください。

お金のことで追い詰められ、親を憎みながら介護を続けること。お金のことは制度に任せて、子どもとして親に会いに行くこと。親にとって、どちらが幸せでしょうか。

お金は制度に任せる。気持ちは家族が持つ。

生活保護は、親を手放すための手段ではありません。親を憎まずにいるための手段です。

使わずに済むなら、それに越したことはありません。ただ、知っているかどうかで、追い詰められたときに選べる道が変わります。

まとめ

  • 介護保険料は制度開始から倍以上になり、施設の料金も上がっていく。介護のお金はこれからも増えていく
  • 介護は平均4年7か月、7人に1人は10年以上続く。終わりが見えないことが、子育てとのいちばんの違い
  • 成人した子どもが親を養う義務は「自分の生活を送ったうえで、余力の範囲」まで
  • まずは高額介護サービス費や食費・居住費の軽減など、費用を軽くする制度を使い切る
  • それでも足りなければ、生活保護という選択肢がある。介護の自己負担は実質なくなるが、住まいには上限がある

※本記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。生活保護を受けられるかどうかや扶養の範囲は、それぞれの事情によって判断されます。具体的なことは、お住まいの市区町村の福祉事務所や専門家にご相談ください。

あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

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