介護のお金の話をすると、「うちは補助の対象じゃないので」と言われることがあります。
でも、よく聞いてみると対象だった。そういう場面が本当に多いのです。理由はたいてい、制度の名前と中身が結びついていないことにあります。
今日紹介するのは、高齢になって介護が必要になった方が使える制度を4つです。どれも全国どこでも使えます。
先にひとつだけ、お伝えしておきたいことがあります。この中には名前に「障害者」とついている制度が出てきます。ですがこれは、障害者手帳をお持ちの方だけの話ではありません。歳を重ねて介護が必要になった、その状態そのものが対象になる制度です。名前で「うちには関係ない」と思わずに、読んでみてください。
この記事で紹介する4つ
| 制度 | どんな人が | 何が起きるか |
|---|---|---|
| ①障害者控除 | 要介護認定を受けている65歳以上の方 | 税金が安くなる(最大75万円の控除) |
| ②特別障害者手当 | 在宅で常時特別の介護が必要な方 | 現金が月およそ3万円 |
| ③医療費控除 | 医療費が年10万円を超える方 | 税金が戻る |
| ④介護休業給付金 | 働きながら介護する家族 | 賃金の67%を93日分 |
①と③は税金が安くなる制度、②と④は現金が入ってくる制度です。種類が違うので、窓口も手続きも別になります。ひとつずつ見ていきます。
①税金が安くなる|障害者控除
なぜ介護を受けている人が「障害者」なのか
税金の世界でいう「障害者」は、障害者手帳をお持ちの方だけを指すのではありません。
所得税法では、65歳以上で、手帳をお持ちの方に準ずる状態だと市町村長が認定した人も障害者として扱うと決められています。
高齢で心身が不自由になった方は、手帳を申請しないことがほとんどです。「障害」ではなく「歳をとったから」と受け止めるからです。ですが生活のしづらさは、手帳をお持ちの方と変わりません。手続きをしたかどうかの違いで税の扱いが変わるのは公平ではない。そういう考え方の制度です。
なお、すでに身体障害者手帳などをお持ちの方は、この認定を受ける必要はありません。もともと対象に含まれているためです。また、この認定を受けられるのは65歳以上の方に限られます。
どういう状態なら対象になるのか
多くの市町村では、要介護度ではなく「日常生活自立度」という指標で判断しています。要介護認定のときに、認定調査票と主治医意見書に記録されているものです。おおよその目安は次のとおりです。
| 区分 | 状態の目安 |
|---|---|
| 障害者 | 屋内での生活はおおむね自立しているが、外出には介助が必要 |
| 特別障害者 | 日中もベッドで過ごすことが多い、ほぼ寝たきり、寝たきり |
認知症の程度(認知症高齢者の日常生活自立度)で判断する市町村もあります。基準は自治体ごとに違うので、あくまで目安としてご覧ください。
どこに申請するのか
お住まいの市区町村の窓口です。高齢者福祉課、長寿福祉課、介護保険課など、自治体によって名前が違います。「障害者控除対象者認定書がほしい」と伝えれば通じます。
用意するものは、申請書と介護保険被保険者証が基本です。郵送で受け付けている自治体も多くあります。税務署ではなく市区町村、というところがポイントです。
ここで大事なことをひとつ。要介護認定を受けているだけでは、控除は受けられません。国税庁も「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」と明記しています。認定書を取る、というひと手間が必ず必要です。
いくら控除されるのか
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
これは「もらえる金額」ではなく「税金の計算から差し引ける金額」です。実際に安くなるのは、この金額に税率をかけた分になります。
申告するのは、ご本人とは限りません
ここが見落とされがちなところです。
ご本人が年金だけで住民税が非課税なら、ご本人が申告しても戻る税金はありません。意味が出るのは、その方を扶養しているご家族が、自分の申告に入れたときです。
しかも同居して介護している場合は「同居特別障害者」にあたり、控除額は75万円。誰が申告するかで、金額が大きく変わります。
そして過去5年分までさかのぼって申告できます。何年も対象だったのに使っていなかった、という場合は、まとまった額が戻る可能性があります。
②現金がもらえる|特別障害者手当
この手当は、在宅で常時特別の介護を必要とする20歳以上の方が対象です。障害者手帳は必須ではありません。介護保険とは別系統の、障害福祉の制度です。
金額は月におよそ3万円。年4回(2月・5月・8月・11月)にまとめて支給されます。1年で35万円前後。影響はかなり大きいと思います。なお支給額は年度ごとに改定されますので、最新の金額は厚生労働省のページか、お住まいの市町村でご確認ください。
ひとつお断りしておきます。名前は似ていますが、これはさきほどの障害者控除に出てきた「特別障害者」とは別の制度です。根拠となる法律も、窓口も、判定の基準も違います。障害者控除で特別障害者に認定されたからといって、この手当がもらえるわけではありません。それぞれ別に審査されますし、こちらのほうが基準はかなり厳しいと考えてください。
また、対象外になる条件があります。
- 施設に入所している
- 病院や老人保健施設に3か月を超えて入っている
- 本人や扶養義務者の所得が一定以上
「施設」の範囲がわかりにくいので、整理します
ここでいちばん誤解されるのが「施設」の意味です。名前が施設らしくても、制度のうえでは在宅として扱われる住まいがあります。
入所すると対象外になるもの
- 特別養護老人ホーム
- 養護老人ホーム
- 障害者支援施設
- 救護施設・更生施設 など
「在宅」として扱われるもの(対象になり得ます)
- 住宅型有料老人ホーム
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- ショートステイの利用中
意外に思われるかもしれませんが、介護付き有料老人ホームも「在宅」です。特養や養護老人ホームは法律上の「入所施設」ですが、有料老人ホームやサ高住は契約して住む「住まい」だからです。介護付きで提供されるサービスも、介護保険では居宅サービスに分類されています。
老人保健施設は少し扱いが違い、入所施設ではなく「3か月を超えたら対象外」というルールになっています。
ご家族も職員も「施設に入ったから、もう対象外だろう」と考えてしまいがちです。ですが有料老人ホームやサ高住にお住まいなら、要件を満たせば手当は続きます。逆に特養へ移ると止まりますので、住まいを移る相談をされるときは、この差も費用の比較に入れておいてください。
要介護度では判断されません
ここは正確にお伝えしておきます。認定は要介護度ではなく、専門医が書いた診断書の内容で判断されます。厚生労働省が定めた基準があり、これがかなり厳しいのです。
おおまかな目安としては、重い障害が2つ以上重なっている場合や、寝たきりに近く意思疎通も難しい場合が中心になります。たとえば次のようなケースは、該当しにくいと考えられます。
- 片方の麻痺だけの場合
- 認知症があっても、ご家族との会話が成立する場合
- 介助があれば歩ける場合
ですので「要介護5だから通る」というものではありません。介護に手がかかることと、この制度でいう障害が重いことは、別の物差しなのです。
まずはケアマネジャーに聞いてみてください
とはいえ、要介護4か5で、在宅で暮らしている方であれば、検討してみる価値はあると思います。該当する方は実際にいますし、聞いてみるだけなら何も失うものはありません。
順番としては、まず担当のケアマネジャーに聞いてみるのがおすすめです。私たちはご本人の状態を日ごろ見ていますので、可能性がありそうかどうかは、ある程度お伝えできます。いきなり窓口へ行くより、話が早いはずです。
そのうえで見込みがありそうなら、市町村の障害福祉の窓口(障害福祉課など)へ。ここでも、相談するだけなら費用はかかりません。
診断書を取るのは、窓口で見込みを聞いたあとで十分です。数千円かかりますし、認定されなくても戻ってこないためです。
なお、この窓口はさきほどの障害者控除とは別になります。同じ市役所でも、担当する課が違うとお考えください。
③税金が戻る|医療費控除
医療費控除は知られている制度ですが、介護サービスの費用が対象になることは、あまり知られていません。
- 特別養護老人ホーム …… 自己負担額の2分の1
- 老人保健施設・介護医療院 …… 全額
- 訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリなどの医療系サービス …… 対象
そして紙おむつ代。医師に「おむつ使用証明書」を書いてもらえば、購入費が対象になります。
なお、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の利用料そのものは対象になりません。ただし、そこで受ける訪問看護や訪問診療は対象です。
10万円は、意外と超えます
「うちはそんなに医療費はかかっていない」と思われるかもしれません。ですが、訪問診療、処方薬、訪問看護、そしておむつ代と積み上げていくと、まとまった額になります。
おむつ代は月に1万円前後かかることも珍しくありません。それだけで年間10万円に届きます。入院があった年ならなおさらです。まずは1年分を集計してみてください。
扶養に入れていなくても、離れて暮らしていても使えます
ここは誤解されやすいところです。医療費控除の条件は「生計を一にしている」ことだけで、扶養親族であることも、親の年金が一定額以下であることも求められていません。年金が多くて扶養控除は使えない、という方でも医療費は合算できます。
そして「生計を一にしている」は、同居を意味しません。離れて暮らしていても、生活費や療養費を継続して送っていれば該当します。老人ホームの利用料をご家族が負担している場合も同じで、施設へ直接振り込んでいてもかまいません。
ひとつだけ、記録は残しておいてください。現金の手渡しではなく振込にしておくと、あとで説明ができます。
領収書は、どこまで必要か
病院や薬局で払った保険診療分は、マイナポータルと連携すれば確定申告に自動で取り込めます。領収書を保管しておく必要もありません。
ただし、これで済むのは保険診療だけです。次のものは自分で集計し、領収書を保管しておく必要があります。
- 特養・老健などの施設サービス費
- 訪問看護、通所リハビリなど介護保険のサービス
- おむつ代(あわせて医師の「おむつ使用証明書」が必要)
- 市販薬、通院の交通費
領収書は申告のときに提出しませんが、5年間の保存が必要です。介護サービスの領収書には医療費控除の対象額が記載されていることが多いので、捨てずに1年分まとめておいてください。
申告するのは、税金を払っている方です
障害者控除と同じ考え方です。ご本人が年金だけで住民税が非課税なら、ご本人が申告しても戻るお金はありません。
生計を一にするご家族が、ご自身の確定申告にまとめて入れてください。ご家族自身の医療費も一緒に合算できます。
手間はかかります。1年分の領収書を保管し、確定申告をする必要があるからです。ただ、こちらも5年さかのぼれますので、過去の分をまとめて出すこともできます。
④休んだ分の収入を補う|介護休業給付金
これまでの3つは、介護を受ける方に関する制度でした。4つ目は介護する側の制度です。
使えるのは「要介護2以上」が目安です
介護休業は、誰でも取れるわけではありません。介護する相手が「常時介護を必要とする状態」であることが条件になります。
その判断基準のひとつが、介護保険の要介護2以上です。要介護2以上の認定を受けていれば、それだけで要件を満たします。要介護1以下でも、厚生労働省が定めた別の基準に当てはまれば対象になります。
対象になる家族の範囲も、思われているより広いです。
- 配偶者/父母/子
- 配偶者の父母(義理のご両親)
- 祖父母/兄弟姉妹/孫
「自分の親の介護」だけの制度ではありません。義理のご両親を介護されている方も対象です。
いくら、どのくらい休めるのか
雇用保険に入っている方が家族の介護のために休業した場合、休業前の賃金のおよそ67%が支給されます。対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取ることができます。
月給20万円の方なら、93日で40万円前後になる計算です。ただし上限があり、1か月あたりの支給額は356,574円までとなっています(令和7年8月〜令和8年7月)。
93日は「介護をする期間」ではありません
「93日休んだら職場に迷惑がかかる」と考えて、制度を調べないまま離職してしまう方がいます。ですが介護休業は、付きっきりで介護する期間というより体制を整えるための期間です。認定を受け、サービスを組み、生活のかたちを作る。そのための93日だと考えてください。
短い休みには「介護休暇」があります
混同されやすいのですが、介護休業とは別に介護休暇という制度もあります。
| 介護休業 | 介護休暇 | |
|---|---|---|
| 期間 | 通算93日 | 年5日(対象家族2人以上なら10日) |
| お金 | 賃金の67%が出る | 出ないことが多い(無給) |
| 取り方 | まとまった休み | 1日・時間単位で取れる |
| 向いている用途 | 介護の体制を整える | 通院の付き添い、面談など |
通院の付き添いやケアマネジャーとの面談など、数時間だけ抜けたいときに使えるのが介護休暇です。無給の職場が多いのですが、時間単位で取れるので使い勝手はよいと思います。有給休暇を使い切ってしまう前に、こちらを思い出してください。
2025年4月から、会社に説明する義務ができました
法改正により、勤務先には次のことが義務づけられました。
- 介護に直面した社員へ、制度を個別に知らせ、利用の意向を確認すること
- 40歳になった時点で、介護に関する情報を提供すること
- 研修や相談窓口を設けるなど、休みを取りやすい環境を整えること
「知らないまま辞めてしまう」ことを防ぐための改正です。会社から説明がなかったとしても、制度がある前提で相談して構いません。手続きは勤務先を通して行うのが一般的なので、まずは職場の担当部署へ声をかけてみてください。
4つに共通しているのは「申請しないともらえない」こと
どれも、こちらから申請しないと1円も入ってこないということです。
役所は「あなたは対象ですよ」とは教えてくれません。制度の説明は正確でも、「あなたのことです」とは書かれていないからです。
だからこそ、少しでも心当たりがあれば、窓口で聞いてみてほしいと思います。「該当しませんでした」で終わっても、失うものは何もありません。
このほか、市町村が独自に行っている支援もあります。紙おむつの支給、家族介護慰労金、緊急通報装置の設置、配食サービスなど。こちらはやっている自治体とやっていない自治体があり、条件も金額もそれぞれ違います。
税金に関することは税務署、手当や独自の支援については市町村の窓口が確実です。そして担当のケアマネジャーがついている方は、まずケアマネに聞いてみてください。地域の制度を把握しておくのが私たちの仕事です。遠慮はいりません。
あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

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