高齢者の体の痛みはなぜ起きる?——骨・関節・筋肉を守るために今日からできること

介護の知識

「膝が痛い」「腰がつらい」「肩が上がらなくなった」——高齢になると、こうした声をよく耳にします。現場でも、「歳だから仕方ない」とあきらめている方に多く出会います。でも、本当にそれは歳のせいだけなのでしょうか。

痛みには必ず理由があります。そして、その理由を知ることが、痛みを和らげ、予防するための第一歩になります。今回は、高齢者の体の痛みがなぜ起きるのか、そして何ができるのかを考えていきたいと思います。

高齢者の「痛み」は骨・関節・筋肉のどれ?

一口に「体が痛い」といっても、その原因は大きく3つに分けられます。

① 骨の問題——骨粗鬆症

加齢とともに骨密度は低下します。特に女性は閉経後にホルモンバランスが変化し、骨がもろくなる骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症になると、転倒はもちろん、くしゃみや重いものを持ち上げるだけで骨折することもあります。「くしゃみで肋骨が折れた」という話、実は珍しくありません。

② 関節の問題——変形性関節症・四十肩

膝や腰の痛みで多いのが変形性関節症です。関節のクッションである軟骨が、加齢とともに水分を失いすり減ることで、骨と骨が直接ぶつかるように。慢性的な痛みや動きにくさが出てきます。60歳以上の高齢者に非常に多い疾患です。

肩の場合は四十肩・五十肩(拘縮肩)が代表的です。肩関節の炎症によって腕が上がらなくなり、夜中に痛みで目が覚めることもあります。「運動不足がひとつの原因」と言われることがあります。

③ 筋肉の問題——サルコペニアと廃用症候群

加齢によって筋肉量が自然に減っていく状態をサルコペニアといいます。30代から少しずつ始まり、70代になると顕著に進みます。筋肉が減ると関節を支える力が弱まり、膝や腰に余分な負担がかかって痛みが生じやすくなります。

さらに怖いのが廃用症候群です。「痛いから動かない→さらに筋肉が落ちる→もっと痛くなる」という負のスパイラルに入ってしまうことがあります。あっという間に体の機能が落ちていく方もおられます。

ゴムも、筋肉も——使わないと硬くなる

私自身、四十肩と診断されたとき、医師からこう言われました。「運動不足ですね」と。

最初はびっくりしましたが、考えてみれば当たり前のことでした。ゴムは使わずに放置すると、カチカチに硬くなって切れやすくなりますよね。筋肉も同じです。日常的に動かしていないと弾力を失い、少しの負荷で傷みやすくなります。

関節も同様です。肩関節は普段から動かしていないと関節包(関節を包む袋)が硬くなり、拘縮(こうしゅく)といって動きが固まってしまいます。これが四十肩・五十肩の正体です。膝も腰も、「使わないから硬くなり、硬くなったから痛くなる」という流れは共通しています。

もともと活動的だった方ほど、年を重ねても足腰がしっかりしている印象があります。逆に、若いころから体を動かす習慣がなかった方は、高齢になってから一気に体の衰えが出てくることも少なくありません。

くしゃみや転倒で「急に痛む」のはなぜ?

「くしゃみをしたら腰が痛くなった」「転んだわけじゃないのに体が痛い」——こういった経験はありませんか?

くしゃみは、実は体幹に非常に大きな瞬間的な力がかかる動作です。普段から体を動かしていない方は、その力に筋肉がついていけず、筋肉痛や、最悪の場合は骨折を引き起こすこともあります。

転倒時も同じです。転ぶまいとして体をとっさに支えるとき、普段は使わない筋肉に一気に力が入ります。その結果、打撲の痛みに加えて筋肉痛も重なり、体が思うように動かせなくなります。「転んだだけなのに、なんでこんなに体中が痛いんだろう」というのは、こういう理由からです。

痛みで動けなくなる→さらに筋力が落ちる→次の転倒リスクが上がる。この悪循環を断ち切るためにも、日頃から体を動かすことが何より大切です。

筋肉を鍛えると、関節の痛みが和らぐ——エビデンスあり

ここで良いニュースをお伝えします。筋肉を鍛えることで、膝や腰の痛みは軽減・予防できることが、国内外の研究で示されています。世界変形性関節症学会や日本整形外科学会のガイドラインでも、運動療法が最優先で推奨されています。

なぜかというと、膝や腰の関節は、周りの筋肉がクッションの役割を果たしているからです。筋肉がしっかりしていれば衝撃が分散されて関節への負担が減り、痛みも出にくくなります。特に重要な筋肉は次の3つです。

  • 大腿四頭筋(太ももの前)——膝への衝撃を吸収するメインの筋肉
  • 大臀筋(お尻)——歩行を安定させ、膝への負担を分散する
  • 内転筋(太ももの内側)——膝の左右のブレを防ぐ

「筋力の弱い人ほど変形性膝関節症になりやすい」という研究データもあります。筋肉を使い続けることが、そのまま関節を守ることにつながります。

だから、歩くことが一番の薬になる

「じゃあ、どんな運動をすればいいの?」という話になりますが、まず取り組んでほしいのはウォーキングです。

ウォーキングは、大腿四頭筋・大臀筋・内転筋をバランスよく使える有酸素運動です。特別な道具も場所も費用も必要ありません。「1日30分」が難しければ、「10分×3回」でも効果があります。大切なのは続けることです。

週2〜3回でも、3ヶ月続けると関節の安定感や痛みの軽減を実感できることが多いです。散歩を日課にしている方は、同世代と比べて足腰がしっかりしている印象があります。「歩く習慣」が、体を守っているのだと感じます。

ただし、すでに痛みがある場合は、まず整形外科で原因を確認してから、医師やリハビリ担当者と相談しながら進めることをおすすめします。痛みをこらえて無理に歩くのは逆効果になることもあります。

【プロテイン】歩くだけじゃなく、たんぱく質も忘れずに

運動と合わせて、ぜひ意識してほしいのがたんぱく質(プロテイン)の補給です。筋肉を動かした後、材料となるたんぱく質が足りていないと、筋肉の修復・合成がうまく進みません。せっかく歩いても、材料がなければ筋肉は育たないのです。

肉・魚・卵・大豆製品を意識して摂るのが基本ですが、食が細くなってきた方にはプロテインを活用するのもひとつの方法です。運動と栄養はセットで考えることが、体を守る近道です。

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まとめ——「動かす習慣」が体を守る

  • 高齢者の体の痛みは、骨・関節・筋肉それぞれに原因がある
  • 筋肉は使わないと硬く弱くなり、関節への負担が増えて痛みが出やすくなる
  • くしゃみや転倒で急に痛むのも、筋肉の衰えが背景にある
  • 筋肉を鍛えることで膝・腰の痛みは軽減・予防できる(エビデンスあり)
  • まずはウォーキングから。続けることが何より大切
  • 運動とたんぱく質補給をセットで考える

「歳だから仕方ない」とあきらめないでください。体は、動かせば応えてくれます。小さな一歩から、今日始めてみませんか。

あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を推奨するものではありません。体の痛みが続く場合は、必ず整形外科などの専門医にご相談ください。

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