孤独死が多いのは、高齢化した県ではなかった

介護の知識

孤独死は高齢化の問題だと、私はずっと思っていました。

でも、都道府県のデータを人口比で並べ直してみて、考えが変わりました。まったく逆だったのです。

データが示した、意外な事実

警察庁の統計から、自宅で亡くなった一人暮らしの高齢者数を、各県の65歳以上人口で割ってみました。

  • 東京——高齢化率22.7%(全国で最も低い)/発生率246.7で全国1位
  • 秋田——高齢化率39.5%(全国1位)/発生率134.2で34位
  • 山形——高齢化率35.6%(全国5位)/発生率95.8で最下位

高齢化率と発生率の相関係数はマイナス0.50高齢者が多い県ほど、一人で亡くなる高齢者は少ないという関係でした。

では何と相関していたか。県の総人口です(プラス0.68)。つまり——効いているのは「高齢化」ではなく「都市であること」でした。

東京と山形では、実に2.6倍の開きがあります。

この数字が測っているもの

都市には単身世帯が多く、三世代同居は少なく、近所づきあいも希薄です。

つまりこの統計が映しているのは、高齢化の進み具合ではありません。その地域に「気づいてくれる誰か」がどれだけいるかです。

同居する家族、隣に住む人、民生委員、そして介護サービスの事業所。誰かの目が届いているかどうか——それが数字の正体でした。

もうひとつ付け加えると、自宅で亡くなった一人暮らしの方のうち約4分の1は65歳未満です。孤立は、高齢者だけの問題ですらありません。

では、どうつながりを持てばいいのか

ここからが本題です。

「つながりを持ちましょう」と言うのは簡単ですが、実際には難しい。人付き合いが苦手な方もいれば、今さら地域に入っていけないと感じる方もいます。

だから私は、ふたつの方向から考えるべきだと思っています。自分でつながりを作ることと、制度を使ってつながりを確保することです。

趣味だけの関係で、十分

まず、自分で作るつながりについて。

大事なのは、みんなと仲良くする必要はないということです。

印象に残っている話があります。ある地域の体操サークルでのことです。

体操のために集まっていたサークルで、あるとき「料理もやってみよう」という話になった。ところが、それを始めてから人間関係がおかしくなってしまった。だから料理はやめた。体操のためだけに集まっていたから、うまくいっていたのだ——。

これを聞いたとき、つながりの本質はここにあると感じました。

関係を深めようとすると、価値観の違いが表に出ます。役割の押し付け合いや、力関係が生まれる。「体操だけ」という限定が、心地よい距離を保っていたのです。

もし料理をしたいなら——料理のサークルを作ればいい。目的ごとに関係を分ければ、それぞれが軽くなります。

だから、趣味を持つことをおすすめします。囲碁でも、俳句でも、園芸でも、カラオケでも構いません。「その趣味の話だけをする相手」がいる——それだけで、人は孤立から遠ざかります。

深い友情は要りません。「今日、あの人来てないね」と気づいてもらえる関係があれば、それで十分なのです。

制度を使って、つながりを確保する

とはいえ、外に出るのが難しい方もいます。そこで制度やサービスの出番です。

実は、介護保険サービスを使うこと自体が、見守りになっています。

  • デイサービス——週に1〜2回、必ず誰かが顔を見ます。来なければ連絡がいきます
  • 訪問介護・訪問看護——定期的に家に人が入ります
  • ケアマネジャーの訪問——月1回の面談は、安否確認でもあります

介護保険以外にも、地域にはさまざまな仕組みがあります。

  • 配食サービス——食事を届けると同時に、安否確認をしてくれる自治体が多くあります
  • 緊急通報装置——ボタンひとつで連絡がいく。自治体が貸与している場合も
  • 見守り機器——電気ポットや電気の使用状況で異変を知らせる仕組み
  • 新聞・郵便・宅配の見守り——事業者が異変に気づいたら連絡する協定を結んでいる自治体があります
  • 民生委員の訪問——地域の見守り役です
  • いきいきサロン・通いの場——介護認定がなくても参加できる集まり

こうした情報は、地域包括支援センターに聞けば教えてもらえます。「まだ介護は必要ない」という段階でも相談できる場所です。

支える側が潰れないために

そしてもうひとつ、大切なことがあります。

身近に気になる人がいるとき、「自分がなんとかしなければ」と背負い込まないことです。

善意で関わり始めた結果、相手が依存してくることがあります。買い物を頼まれ、病院に付き添い、金銭の相談まで持ちかけられる。断れなくなって、支えていた側が潰れてしまう——現場でも見かける光景です。

だからこそ、制度とサービスを使って負担を分担するのです。

自分ができるのは「様子を見て、気になったら連絡すること」まで。そこから先は、地域包括支援センターやケアマネジャーにつなぐ。専門職に渡していいのです。

適切な距離を保つことは、冷たさではありません。長く関わり続けるための知恵です。

気にかける側になる

最後に。

データを見ると、孤独死が少ない地域には「気づく人」がいるということが分かります。制度が整っているだけでなく、日常の目があるということです。

新聞受けが溜まっていないか。夏なのに窓が閉まったままではないか。しばらく姿を見ていないのではないか。

気づいたら、一人で抱えず、地域包括支援センターに連絡する。それだけで十分です。

身寄りのない方が直面する制度上の壁についてはこちらの記事に書きました。あわせて読んでいただければと思います。

まとめ

  • 孤独死が多いのは高齢化した県ではなく都市部。高齢化率とはむしろ逆相関(r=−0.50)。
  • この数字が測っているのは「気づいてくれる誰かがいるか」。つながりの問題である。
  • 亡くなった一人暮らしの約4分の1は65歳未満。高齢者だけの問題ではない。
  • つながりは趣味だけの関係で十分。深めようとすると壊れることもある。
  • デイサービス、配食、緊急通報装置、見守り機器——制度を使ってつながりを確保する
  • 支える側は背負い込まない。専門職につないでいい。適切な距離は冷たさではない。

※本記事のデータは警察庁「自宅において死亡した一人暮らしの者」の統計と総務省の人口推計をもとに算出した概算です。この統計は「孤独死」そのものの集計ではなく、発見までの時間や看取りの有無は問われていません。利用できるサービスは地域により異なります。詳しくはお住まいの地域包括支援センターにご相談ください。

「今日、あの人来てないね」——そう言ってもらえる場所が、ひとつあればいい。つながりとは、案外その程度のもので足りるのだと思います。

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