腰が痛くなったらコルセット、膝が痛くなったらサポーター。多くの方が、そう考えると思います。
では、痛くならないために何かしていますか。そう聞かれると、答えに詰まる方が多いのではないでしょうか。腰と膝を守るいちばんの方法は、実は道具ではなく、自分の筋肉です。
介護が必要になる原因の、約4人に1人は骨と関節です
厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)で、介護や支援が必要になった主な原因を見ると、「骨折・転倒」が13.9%、「関節疾患」が10.2%でした。合わせると約4人に1人です。要支援の方に限ると、「関節疾患」が原因の1位(19.3%)になっています。
腰や膝が痛くなると、動くのがおっくうになります。動かないと筋肉が落ち、筋肉が落ちると関節への負担が増えて、さらに痛くなる。転びやすくもなります。
現場の肌感覚として、「膝が痛いから歩かない」が続いた方ほど、歩ける距離が短くなっていくように感じます。腰と膝を守ることは、そのまま介護予防になります。
腰痛予防で効果がはっきりしているのは、運動だけでした
腰痛を予防する方法について、世界中の研究をまとめて分析した報告があります。結果はとてもシンプルでした。
- 運動をした人は、腰痛になるリスクが約35%下がった
- 腰痛ベルトや靴の中敷きには、予防の効果が認められなかった
- 腰痛についての知識を学ぶだけでも、予防にはならなかった
腰痛ベルトやコルセットは、痛いときに腰を支えるには役立ちます。ですが、痛くならないようにする効果は、運動にしか確かめられていないのです。
膝も同じです。日本整形外科学会の診療ガイドライン(2023年)では、膝の軟骨がすり減って痛む「変形性膝関節症」に対して、太ももの筋肉を鍛える運動と、体重の管理がすすめられています。
ここで大事なのは、特別なトレーニングである必要はないということです。どの運動がいちばん効くかは、はっきりしていません。続けられる運動が、いちばんの運動です。
見直したいのは、座り方より「座りっぱなし」
背もたれに体を預けて、お尻が前にずれた座り方。いわゆる「社長座り」です。腰が楽に感じるので、ついこの姿勢になる方も多いと思います。
研究では、背中を丸めて座ると、骨盤を立てて座ったときに比べて、腰を支える深いところの筋肉があまり働かなくなることが確かめられています。楽に感じるのは、筋肉が休んでいるからです。
ただし、胸を張って背筋をピンと伸ばせばいい、というわけでもありません。胸を張る座り方でも、腰の深い筋肉はあまり働いていないことがわかっています。大事なのは胸ではなく、骨盤を立てることです。椅子の座面に、お尻の左右の骨でまっすぐ座るイメージです。
そして、いちばんの問題は座り方そのものより、同じ姿勢のまま長く座り続けることです。社長座りでも、良い姿勢でも、何時間も動かなければ、支える筋肉は使われません。座りすぎの問題は、こちらでも書いています。
座りすぎはタバコに匹敵する。
介護の現場では、お尻が前にずれて背もたれに寄りかかる座り方を「仙骨座り」と呼びます。年を重ねて支える筋力が落ちると、この座り方になる方が多くなります。お尻の骨の部分に床ずれができやすく、飲み込む力も落ちて、むせやすくなります。デイサービスで「座り直しましょうか」と声をかけるのは、このためです。
40代・50代の今、楽な姿勢に預けっぱなしにしないこと。支える筋肉を使う時間を、今のうちから少しずつ持っておくことが、将来の自分の座り姿を変えます。
腰と膝を守る、毎日のちょっとした見直し
大きく生活を変える必要はありません。どれも、今日からできることです。
- 30分に一度、立ち上がる:トイレ、飲み物を取りに行く、電話は立って受ける。座りっぱなしを区切るだけで十分です
- いつもより少しだけ多く歩く:エレベーターを1階分だけ階段にする、ひと駅ぶん歩く。歩くことは、腰にも膝にもいちばん手軽な運動です
- 骨盤を立てて座る時間をつくる:ずっとでなくてかまいません。食事のときだけ、パソコンに向かうときだけ、から始めます
- 体重を少しだけ減らす:研究では、体重が1kg減ると、歩くときに膝にかかる負担が1歩あたり約4kg減ると報告されています。1日に何千歩も歩くことを考えると、小さくない差です
- 筋肉の材料をとる:筋肉はたんぱく質から作られます。肉・魚・卵・大豆製品を毎食とり、食事だけで足りないときは、プロテインを取り入れるのもひとつの方法です
椅子に座ったままでもできる、腰と膝の体操
デイサービスの体操でもよく取り入れている動きです。テレビを見ながらでもできます。
① 膝を伸ばして止める(太もも)
椅子に浅めに座り、片方の膝をゆっくりまっすぐ伸ばします。つま先を天井に向けて5秒止め、ゆっくり下ろします。左右10回ずつ。膝を支える太ももの前の筋肉が鍛えられます。
② 手を使わずに立ち座り(太もも・お尻)
腕を胸の前で組み、椅子からゆっくり立ち上がって、ゆっくり座ります。10回。座るときこそ、ゆっくりが大事です。腰と膝の両方を支える、太ももとお尻の筋肉を使います。
③ お腹をへこませる(お腹の深い筋肉)
骨盤を立てて座り、息をゆっくり吐きながらお腹をへこませて、10秒保ちます。5回。腰を内側から支える筋肉を使います。
④ お尻を持ち上げる(お尻・背中)※寝る前に布団の上で
仰向けで両膝を立て、お尻をゆっくり持ち上げて5秒止め、ゆっくり下ろします。10回。
全部やらなくてかまいません。ひとつでも、毎日続けることのほうが大切です。痛みが強いとき、しびれがあるときは無理をせず、整形外科を受診してください。
転ばない体をつくることは、骨折を防ぐことにもつながります。
骨折を防ぐことは、未来を守ること——後期高齢者医療費で最もお金がかかっていたもの
まとめ
- 介護が必要になる原因の約4人に1人は、骨折・転倒と関節の病気。腰と膝を守ることは介護予防そのもの
- 腰痛予防で効果が確かめられているのは運動だけ。腰痛ベルトや靴の中敷きには予防効果が認められなかった
- 社長座りは腰を支える筋肉を休ませる。ただ、いちばんの問題は同じ姿勢で座り続けること
- 30分に一度立つ、少し多く歩く、骨盤を立てて座る、体重を少し減らす、たんぱく質をとる
- 特別なトレーニングはいらない。座ったままの体操を、ひとつでも毎日続ける
コルセットやサポーターは、痛くなってから体を支えてくれるものです。痛くならないように支えてくれるのは、自分の筋肉しかありません。今日の30分に一度の立ち上がりが、10年後、20年後の腰と膝を守ります。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとにした一般的な内容です。腰や膝に痛み・しびれがある方、持病のある方は、運動を始める前に医師にご相談ください。
あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

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