「アドバイスしたのに、動いてくれない」「面談が雑談で終わってしまう」——そんな経験はありませんか。
最近GROWモデルという対話の型を知り、これは現場で使えると感じました。相手に答えを教えるのではなく、質問によって本人の中から答えを引き出す——コーチングの基本とされる考え方です。自分の理解を整理する意味も込めて、まとめてみます。
GROWモデルとは
GROWモデルは、コーチングで相手の考えを整理し、目標を明確にして、実際の行動につなげるための対話の型です。名前は4つの段階の頭文字からきています。
- G:Goal(目標)——どうなりたいのか
- R:Reality(現状)——今はどうなっているのか
- O:Options(選択肢)——どんな方法が考えられるのか
- W:Will / Way Forward(意志・行動計画)——実際に何をするのか
ポイントは、単に「目標を決めて頑張りましょう」ではないことです。本人の中にある考えや可能性を質問で引き出し、自分で納得できる行動を決めてもらう——ここが中心にあります。
G:Goal ― 目標を明確にする
最初に確認するのは、「困っていること」ではなく「最終的にどうなりたいか」です。
よく使う質問はこんな形です。
- 最終的に、どのような状態になりたいですか
- それが実現したら、何が変わりますか
- いつまでに達成したいですか
- 達成できたと、何をもって判断しますか
たとえば「仕事を頑張る」では、達成したかどうかが分かりません。「毎日の残業を見直して、3か月後には週3日は定時で帰れるようにする」——ここまで具体化すると、行動が考えられるようになります。
注意したいのは、こちらが目標を決めてしまわないことです。「それなら資格を取りましょう」と先回りすると、本人の目標ではなく、こちらの提案になってしまいます。本人の言葉で目標を確認する。ここが出発点です。
R:Reality ― 現状を正確に把握する
次に、今どうなっているのかを確認します。感情や思い込みではなく、できるだけ事実を整理するのがコツです。
- 今はどのような状況ですか
- すでに試したことはありますか
- うまくいっていることは何ですか
- 何が障害になっていますか
- 自分で変えられることは何ですか
先ほどの「週3日は定時で帰りたい」なら、こんな現状が見えてくるかもしれません。記録を夕方にまとめて行っている。電話対応で作業が中断される。人に頼むのが苦手。依頼された順に処理している——。
この段階で大切なのは、責めないことです。「なぜできないのですか」ではなく、「何が影響していると思いますか」と聞く。それだけで、相手は驚くほど考えやすくなります。
O:Options ― 選択肢を広げる
現状が見えたら、方法を考えます。ここでのポイントは、すぐに一つに絞らないこと。まず広げて、あとで選びます。
- どのような方法が考えられますか
- 他にはありますか
- 制約がなければ、何をしますか
- 小さく始めるなら、何ができますか
- 過去にうまくいった方法はありますか
定時退勤の例なら——午前中に記録時間を確保する、電話対応を分担する、毎朝の優先順位を3つ決める、テンプレートを作る、まず週1日だけ定時退勤日を設ける…と、いくらでも出てきます。
「できるかどうか」を早く判断しすぎないのが大事です。実現可能性を考え始めると、選択肢が一気に痩せてしまいます。
W:Will ― 行動を決める
最後に、実際に何をするかを決めます。選択肢を出しただけでは、行動にはつながりません。
- どの方法を選びますか
- 最初の一歩は何ですか
- いつから始めますか
- 誰に協力してもらいますか
- いつ振り返りますか
良い行動計画は、「いつ・どこで・何を・どの程度・誰と」まで具体化されています。
来週から、火曜と木曜の10時から30分を記録時間として予定表に入れる。電話対応は同僚に相談する。2週間後に残業時間を確認する。
ここまで決まれば、実行できる可能性はぐっと上がります。
「10点満点」の質問が便利
GROWモデルでよく使われるのが、数値で聞く質問です。
「この行動を実行できそうな度合いは、10点満点で何点ですか?」——本人が「5点」と答えたら、「8点にするには何が必要ですか?」と続けます。
すると、時間が足りない、家族の協力がいる、目標が大きすぎる…と障害が具体的に見えてきます。実行可能性が低いときは、行動を小さくするのが定石です。「毎日30分運動する」が難しければ「週3回、10分歩く」まで下げる。小さな一歩を今日から始めるという考え方と同じですね。
ティーチングとの使い分け
GROWモデルを使ううえで、はっきりさせておきたい区別があります。
- ティーチング:知識や方法を教える。「記録はこの手順で入力してください」
- コーチング:本人の考えを引き出す。「記録時間を短縮するには、どの方法が使えそうですか」
どちらが優れているという話ではありません。知識がないときはティーチング、自分で考える力を育てたいときはコーチング。現場では両方を組み合わせるのが現実的です。
万能ではない——注意しておきたいこと
便利な型ですが、どんな場面でも使えるわけではありません。
- 本人に考える余裕がないとき:強い不安、混乱、体調不良、緊急時。事故や急変の場面で「あなたはどうしたいですか」と問い続けるのは適切ではありません。情報提供と具体的な支援が先です。
- 知識が不足しているとき:制度を知らない人に選択肢は出せません。まず説明が必要です。
- 目標が本人のものでないとき:会社や上司から与えられた目標では、主体性は生まれません。
- 質問攻めになるとき:連続して質問すると尋問のように感じられます。要約する、共感する、沈黙を待つことも同じくらい大切です。
そして、G→R→O→Wの順番にこだわりすぎないこと。現状を話すうちに目標が変わることもあります。GROWモデルは会話を縛るルールではなく、迷ったときに戻れる地図だと考えるといいと思います。
人と向き合う仕事は、頭も体力も使います。私は日々のたんぱく質補給に、手軽なプロテインを取り入れています。
まとめ
- GROWモデルは、Goal(目標)→Reality(現状)→Options(選択肢)→Will(行動)の順に整理する対話の型。
- こちらが答えを与えるのではなく、質問で本人の考えを引き出すのが本質。
- 目標は本人の言葉で。現状は責めずに事実を。選択肢は広げてから選ぶ。最後は必ず行動まで具体化する。
- 「10点満点で何点?」の質問で障害が見え、行動の大きさを調整できる。
- 知識がないときはティーチング。緊急時や余裕がないときは、まず支援を。
- 順番は絶対ではない。迷ったときに戻れる地図として使う。
次回は、これを介護の現場でどう使うか——職員育成の場面と、ケアマネジャーの面談の場面に分けてお話しする予定です。
人は、他人に指示された行動より、自分で決めた行動のほうがずっと動けます。相手の中にある答えを、一緒に引き出してみませんか。あなた自身が、あなたの人生を一番素敵にできる人です。

コメント